組織の能力: 2011年7月アーカイブ

昨日ある企業の幹部候補者向け研修の一環として、 ㈱経営共創基盤の田中、斉藤両マネジングディレクターに「買収先マネジメント」のテーマで講演していただきました。お二人は、産業再生機構時代含め、多くの企業の再生の最前線で活躍されています。


今や買収先マネジメントは、多くの日本企業にとっても当たり前のことになっています。受講者の多くは、近い将来買収した会社や事業投資先へ経営陣として派遣され、そこでの事業再生にも取組むことになるでしょう。

 

実体験に基づく非常に興味深いお話ばかりでした。最後の質疑応答は、受講者も体験豊富なため鋭い質問が多く、とても実りのあるものでした。

 

講演の中で、こんなフレーズがありました。

 

「よい会社とは、当たり前のことが、当たり前にできる会社

 ふつうの会社とは、当たり前のことが、うまくできない会社」

 

そこでこんな質問がでました。

「では、当たり前のことが当たり前にできる会社よい会社とは、どんな会社ですか?」

 

だめになった会社に数多く接してきた講師にとって、意表を突く質問だったようです。だめになる会社の共通項を知れば、回答に近づくかもしれないと前置きし、こう答えました。

 

「だめになる会社はことごとく、内輪の論理と過去からの継続性に縛られている」

 

つまり、内輪と過去の呪縛により、「当り前」のことがわからなくなってしまうというのです。「社内の常識は社外の非常識」というわけです。これは、人間心理の本質的問題でしょう。組織という環境への適応力が高ければ高いほど、そうなります。

 

逆にいえば、「よい会社」は、それらの呪縛にとらわれない柔軟性を持っているのでしょう。自己否定する力です。ちなみにお二人の会社では、良い情報を上げた人よりも悪い情報を上げた人を評価するようにしているそうです。

 

さらに、「当り前」がわかったとしても、「当たり前にできる」とは限りません。再生の処方箋は難しいことではなく、どんな本にも書いてあるようなことだ、との講師の発言に対して、ではなぜ既存の経営者はそんな自明なことができないのか?との質問もありました。これも本質を突いています。ゴーン社長が来る前の日産社内にも、後にゴーン社長が実行する再生プランとほぼ同じ内容の再生計画があったといいます。でも、自分たちでは実行できなかったのです。

 

こういった人間集団の弱さに対して、同じ人間としてどう対処していくのかが、再生マネジメントのポイントなのかもしれません。

 

「当り前」を常に修正し、それを「当り前」に実行する、そういう当たり前の経営が、実は一番難しいことを、多くの破たん企業の内部でもがいてきたお二人は実感しておられました。

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