組織の能力: 2009年5月アーカイブ

これまで何度も書いてきましたが、この不況によって企業の教育投資が、大幅に削減されています。また、出張旅費も同様に大削減され、やむを得ない社用出張であっても、会社が交通費を負担しない企業も出てきています。

 

このような状況がどのような影響を与えるか、様々な懸念が表明されているようですが、私が問題視しているのは、地方と東京との人材育成に関する格差の増大です。

 

企業を対象とした、一定以上の品質の研修/セミナ/フォーラム等の大部分は東京で行われます。また、一流講師はほとんど東京に集中しています。これまで地方企業の方は、出張にかこつけたり、それを目的に出張し、かろうじて学習する機会を確保してきたとのだと思いますが、それがほぼ全滅になっているようなのです。

 

東京周辺のビジネスパーソンであれば、少なくとも交通費や宿泊費はほとんどかからないので、まだ受講することもできなくはないでしょう。

 

一方、企業の財布が絞られたとしても、個人の学習意欲はまだ衰えていません。逆に危機感を抱えた個人は、資格取得のための学校へ殺到しているという現象も起きています。

 

資格取得が効果的かどうかはともかく、自分の意思で学ぶ機会や学校などは、やはり東京に集中しています。地方企業のビジネスパーソンが、自己啓発的に学ぶ機会は極端に少ないのです。

 

もちろん、だからeラーニングを導入しているんだ、という企業もあるでしょう。しかし、残念ながらeラーニングは、知識の習得には効果的かもしれませんが、思考を深めたり対話を通じて知恵を生みだすという、これからの時代に求められる教育には、まだまだ力不足です。

 

このような状況を放置すれば、さらに地方企業の地盤沈下が促されることでしょう。企業や社会人教育業界、さらに企業を支える金融業界は、そのことへの問題意識をもっと持つべきだと考えます。

今ではもう、レバレッジって何?という方はあまりいなくなりました。でも、それもここ5年くらいのことでしょうか

 

私がビジネススクールで学んでいた80年代末、日本企業は銀行借入への依存度が高く、高いレバレッジでした。一方米企業は、自己資本を厚くした低レバレッジ経営が多かったと思います。

 

借金はできるだけ減らすべきだと思っている学生が、借金はいいことだと納得することはそう簡単ではありませんでした。だって、目指すべき米企業は借金が少ないのに・・・。

 

ところが、バブル崩壊後、日本企業は債務圧縮に努める一方、ファンドが台頭してきた米国では、どんどんレバレッジを高めていきました。それが株主重視の経営。

 

確かにレバレッジは、1の投入資源で10の成果を得るということですから、効率的に違いありません。 レバレッジ.jpgしかし、世の中そう簡単ではなく、それに応じてリスクが高まるのです。結局、効率性とリスクのバランスをどう取るかという、判断になります。

 

レバレッジ重視は、掛け算の経営ともいえるでしょう。掛け算は、足し算より簡単に大きくなります。でも、どこか一つでもゼロになればすべてがゼロに転じてしまいます。足し算はそうではありません。

 

 

少ない大口顧客に依存するのは、高レバレッジの掛け算経営です。多くの小さい顧客ベースを抱えるのは、足し算経営です。今のような不況期には足し算経営に歩があります。そして、老舗企業は、たいてい足し算経営です。

 

人間、調子のいい時はリスクを低く見積もって、レバレッジをかけたくなるものです。そして、今のような時は、思いっきりリスクを高く見る。だから、大きな景気の波が生じるのです。人間が経営する以上、これは避けて通れないでしょう。

 

ただ、人間は経験から学ぶものです。経験と理性が精度を高めるはず。でも、組織は同じ過ちを犯します。それは、組織の意思決定者が、時間を経て変わるからではないでしょうか。そして、経験が伝承されない。

 

既に、戦争経験のある人は、日本の政治や経済、学会の中心にはほとんどいなくなっています。日本が学ばないのではなく、学んでいない人がリーダーになるシステムなのでしょう。

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