組織の能力: 2010年7月アーカイブ

週末NHKで、二日連続の 「恐竜絶滅 哺乳類の戦い」という番組がありました。とても面白かったです。こういう番組ばかりなら、喜んで受信料払います。

 

以下、番組HPからの引用です。

 

恐竜絶滅後の世界で、ほ乳類の前に立ちはだかったのは巨鳥だけではない。全長4メートルにもなる巨大ワニも水辺の王者として君臨していたのだ。鳥とワニが強かった理由は恐竜時代に遡る。両者は恐竜全盛時代から空や水辺という恐竜のいない環境に独自の勢力圏を築き上げた"スペシャリスト"だった。一方、ほ乳類は小型のまま、日陰者的な生き方を余儀なくされていた。この差が恐竜絶滅の直後には、ほ乳類に不利に働いたのだ。ところが、さらに時間が経つと、三者の運命は反転する。小型のままであったほ乳類は"ジェネラリスト"つまり「そこから何にでも進化できる」能力を保っていた。新たな環境変動に対応して、多様な種を生み出し、次第に爬虫類や鳥類を圧倒していったのだ。

 

巨鳥やワニがそれぞれの領域に適合するように特殊化したのに対して、哺乳類の祖先(ねずみみたいなの)は、特殊化もできず、こっそり生き延びていたのです。

 

その形態は、中途半端で特に特徴がありません。特徴がないのが特徴で、アドバンテージだったのです。つまり、環境変化に合わせて、いかようにも進化する可能性を秘めていたのです。実際、そうなっていきました。

 

経営戦略論でも、「過剰適合」だとか「成功の復讐」と「イノベーションのジレンマ」とか同様の概念があります。問題は時間軸だと思います。進化のような超長期であれば、特殊化はリスクです。しかし、短期では、ある程度特殊化しないと生き残っていけません。特殊化せずとも生き残っていける会社があれば、一番いいですね。

 

創業経営者が強いのは、目先の利益を度外視してでも長期的な手が打てることだと思います。それが、次の成長の種なのです。しかしサラリーマン社長はそうもいきません。創業経営者の中には、会社が特殊化しているという意識はないのだと思います。だから、どんな手も長期的視点で打てる。ユニチャームがいきなり紙おむつ市場に参入したように。

 

しかし、社員は会社が特殊化しているから自社は生き残っているんだという意識のような気がします。短期的には確かにそうなのですから。だから踏み出せない。

 

あるオーナー系企業の方いわく、創業者が引退した今、次の儲けの種を誰も生み出せない。たとえ誰かが提案しても、却下されてしまう。結構、深刻な問題です。

先週の金曜日の夜、旧富士銀行の同期会があり参加してきました。私のように辞めている人も含め、非常に多くの同期が集まりました。

 

もう20年以上も会っていない同期とも再会し、なんとも入行当時に戻ったような楽しさでした。不思議なほどの結束力です。やはり、大学を卒業し初めて社会人としての第一歩をともに踏んだ同期は特別だと、つくづく感じ入りました。

 

何でも、不安や期待で心が敏感になっている、「初めて」の時間を一緒に過ごした人々との関係は特別ですね。中学や高校も、最初のクラスがもっとも記憶に残ってますし、大学や大学院でも、最初のイベントやグループで一緒だった友人とは、固い絆で結ばれていたように思います。

 

その中でも特に、学生から社会人への転換は、もっとも大きなイベントだったと思います。それゆえ、いまだに銀行同期の結束は固いのでしょう。私にとっての大きな財産です。

 

 

ところで、昨日人材開発担当者向け一日セミナーで講師を務めました。最後は、受講者それぞれの人材開発にかかわる課題を、皆で検討するというプログラムです。そこで、ある教育系企業の方が、新卒社員がすぐ辞めてしまうという課題を挙げられ、討議しました。自社内だけで考え込んでいても、なかなかいい知恵は浮かんでこないものですが、全く関係ない会社の同じ人材開発担当の方々からは、過去の呪縛などには捉われないとても良いアイデアが出てきたと思います。

 

詳細は書きませんが、新卒社員にとって最初の職場は、人生を変えてしまうほどの重さを持っているということを、そしてかつての自分もそうだったことを受け入れる側の先輩社員が認識することが大切なのではないでしょうか。そうすれば、職場で良い関係性を築くことができそうに思います。

 

自分が新入社員だった頃の柔らかいあやうい気持ちは、日々の業務の中で忘れてしまいがちです。でも、新入社員が入った時期は、それを思い出すいい機会だと思います。世阿弥の「初心忘るべからず」という言葉は、最初に舞台に立った時の醜い自分、その時の気持ちを忘れてはいけないという戒めです。新人の姿が、先輩の先生にすらなり得るのです。

 

富士銀行の良き同期との楽しい時間を思い出しながら、そんなことを思いました。

一昨晩、「スマートHRD養成講座(第二期)」(日本CHO協会主催)の第三回目のセッションを行いました。前期に引き続いて第三回目は、ゲストスピーカーの講演を題材にしたダイアログです。

 

今回のゲストは、今年「能力開発優秀企業賞」と「働きがいのある企業」をダブル受賞した日本ベーリンガーインゲルハイム㈱(以下日本BI)のタレントマネジメント部統括部長の大野宏さんでした。当社は、戦略と組織・個人の一貫性のために、様々な先進的な取組みをしておられます。まさに、新しいHRDすなわちスマートHDRのモデルだと思い、ゲストスピーカーをお願いした次第です。非常に刺激的なお話でしたが、その中の2点について書きたいと思います。

 

私は、スマートHRDには4つの役割があると整理しています。「企業文化の番人」「能力開発の専門家」「ネットワーク・リーダー」「問題解決のパートナー」の4つです。日本BIには、ビジネスパートナー部(BP)という組織が人事本部の中にあり、そこのスタッフがラインに入り込んで、「人・組織・組織風土」の観点から、ラインの戦略目標達成の支援を行っています。まさに、BPは「問題解決のパートナー」なのです。昨日も、受講者の方々からBPに関する質問が多数出てきました。ラインの人事担当ではないのがポイントです。

 

かつて松下電産は、経理社員が独立性の高い事業部に駐在して、経営管理のための神経の役割を果たしていたそうです。「カネ」で束ねるわけですね。一方、日本BIでは、戦略目標達成に向けて、BPが中心となり「ヒト」で束ねているという言い方もできそうです。

 

もう一つ興味深かったのは、「関係の質」にこだわっていることです。組織業績を向上させるには、組織風土が重要。組織風土を良くするには、信頼と誇りと連帯感が欠かせない。では、どうやってそれらを獲得するのか。ビジネスですから、成果が上がっていれば、一般に組織風土も良くなります。ならば、行動の質を上げて、結果の質を高めればいいのだと考えがちです。だから、営業にプレッシャーをかけ、顧客訪問数を上げよう!!というアプローチですね。

 

これは、目に見える「行動の質→結果の質」の関係に着目しているにすぎません。しかし、日本BIでは、「行動の質→結果の質→関係の質→思考の質→(行動の質)」のサイクルで捉えています。つまり、見えにくい「関係の質→思考の質」に着目し、そこに働きかけようとしているのです。このサイクルがうまく回れば、「人と人が多様性の中で、健全でポジティブな関係性を構築することで成果を出し続ける」ことができます。「見えない関係性を見える関係性にし、組織のシステムを開発する」ことにチャレンジしているのです。

 

 

当たり前ですが、現場で実際に手がけている方のお話は、非常に説得力があります。HRDには、まだまだ大きなフロンティアがあると、あらためて身震いする思いでした。

先日、ある会社の経理畑の管理職の方から、最近の経理部門スタッフの足腰が弱くなったとのお話を伺いました。経理業務に関して、知識と考える力が弱くなってきているそうなのです。

 

理由を伺ったところ、約10年前に導入したERPに原因があるということでした。そのころ多くの大企業で、コンピュータの分散化(クライアント・サーバー・システム)に伴い、会計システムをつくり替えなければならなくなったのです。

 

ついては、コスト面からもスピード面からも、従来の自社開発の専用ソフトから汎用パッケージへ切り替え、多くの場合は当時急成長していたERPの導入を決めました。社内独特の会計管理を、グローバル・スタンダードに合わせようという狙いもあったことでしょう。その会社も、大急ぎで導入したそうです。

 

それまでは、10年ごとくらいに会計システムの大幅な変更、つまり作り直しをしてきたそうです。それは大変な作業で、経理担当者の負担も半端ではなかった。しかし、そのプロセスの中で、若い経理マンが徹底的に鍛えられえたのです。そもそも会計プロセスから科目定義まで、あらゆることを再検討するのですから。その方も、そこで相当鍛えられたとおっしゃっていました。

 

現在は、基本的には標準パッケージを使用しているので、経理マンが会計システム見直しに深く関わる機会も多くありません。使うことはできても、自分が作ることに関わっていないのですから、ブラックボックスです。その結果、経理マンの足腰が弱ってきているのです。

 

何事もプロコンがあります。ERPの導入によって多くのメリットもあることでしょう。(現場からは、そうじゃないとの声もあがっているようですが・・)一方、組織の学習能力の観点からは、デメリットもあるのです。

 

これが、この先どういう影響を企業に及ぼすかは、まだわかりません。ただ、なんらかの手を打つ必要はあるかもしれません。

このアーカイブについて

このページには、2010年7月以降に書かれたブログ記事のうち組織の能力カテゴリに属しているものが含まれています。

前のアーカイブは組織の能力: 2010年6月です。

次のアーカイブは組織の能力: 2010年8月です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。

ウェブページ

Powered by Movable Type 4.1