昨日、サイトウ・キネン・フェスティバル松本にて、小澤征爾指揮「戦争レクイエム」を聴きました。ブリテンによる、第二次世界大戦への鎮魂歌です。
オーケーストラも大編成の合唱もソプラノも大変素晴らしく、大満足でした。その中でも、演奏終了後最も大きな拍手を受けたのは、ソプラノのクリスティン・ゴーキーでも小澤さんでもなく、地元松本の児童合唱団の子供たちだと感じました。
この曲では、一般の合唱は教会の音楽を表し、児童合唱は天使の声を表します。児童合唱団は、地元松本の子供から、オーディションで選ばれた子供たちで編成されているそうです。
たぶん児童合唱団は、二階席か三階席から歌っていたのでしょう。私たちは、一階席後方に座っていたので、天使の声のパートの際、天から聞こえてくるようで、よくわからず何度も天井を見上げました。
演奏終了後、子供たちが一階舞台脇に降りてきて、初めて気づきました。そして、万籟の拍手。子供たちの、緊張がほぐれて、そして達成感に満ちたはればれとした顔、顔、顔。彼らは、一生この瞬間を忘れないだろうなあ、とこちらも感動しました。
このような機会を提供するサイトウ・キネン・フェスティバルは、本当に素晴らしいプロジェクトです。松本に赴任している友人の話によると、小学校の合唱部は練習がハードで、土日も休みなしで練習とのこと。きっと、このフェスティバルが確実に、地元に文化の土壌を根付かせているのでしょう。フェスティバルの運営は、多くの地元ボランティアによって支えられているそうです。
数年前、終演後、地元の馬刺しのおいしい店に出かけたところ、さっき演奏していた若手の演奏家たちが、楽しげに打ち上げをしていました。本当に松本の街に溶け込んでいるようすでした。
芸術家と地元の幸せな関係。これは先日の越後妻有「大地の芸術祭」も同様でした。箱モノではなく、本当に地元住民が誇りにでき、しかもそれに参加できるソフトは、ますます成熟化が進む日本の救世主となるのではないでしょうか。
そんな、兆しを感じた夜でした。