組織の能力: 2012年8月アーカイブ

ロンドンオリンピックで睡眠不足の方が多いと思いますが、やはりいいですね。オリンピックほどぎりぎりの状況における人間の本性をたくさん目の当たりにできる機会は他にはありません。あるとすれば戦場でしょうか。

 

ここまでの日本代表の戦いで印象に残るのは、リーダーが力を出しきれなくなったときのチーム力です。体操男子団体戦予選で日本はぼろぼろでした。何と言っても実力世界ナンバー1の内村選手がまさかの失敗の連続。水泳男子も、実績No.1の北島選手がまさかの無冠・・・。フェンシング男子準決勝では、大黒柱太田選手が前の二選手の貯金を食いつぶし、まさかの延長戦に・・・。

 

水泳も体操もフェンシングは基本的には個人競技です。一緒に戦うチーム戦以外では直接のライバルです。そういう関係はちょっと不思議です。女子400mメドレーリレーで銅メダルを取った直後のインタビューで、「普段ライバルなのに、どうしてそんなにいいチームになれるのですか?」とインタビュアーは寺川選手に質問しました。それに対して彼女は答えに窮していました。そんなことを聞かれても困るというふうで。そう、本当のチームワークは理屈じゃ説明できないのでしょう。

 

男子400mメドレーリレーの前、「康介さんを手ぶらで帰すわけにはいかな

400mメドレーリレー男子.jpg

い」と他の3選手は話しあったといいます。体操男子も先輩が次々に崩れる中で、最も若い加藤選手が素晴らしい演技で雰囲気を変えるきっかけを作ったと思います。フェンシング男子も、太田選手以外が結果的には太田選手を支えたと言えます。

 

世代交代はこうして起きるのかもしれません。それまでチームを支えてきた圧倒的リーダーの力に翳りが見えてきたから若手が頑張る、こう言えば簡単そうですが、それだけではないでしょう。若手が頑張って思ってもみなかった力が発揮できるのは、自分のため(リーダーを追い越してやろう)でなく衰えつつあるリーダーを少しでも盛りたてたいからのような気がします。女子400mメドレーリレーが銅メダルを取れたのも、苦労を重ねた最年長の寺川選手のためという面もあったのではないでしょうか。

 

ただ、単に強いリーダーだから「手ぶらで帰せない」と思ったとは思えません。やはりリーダー自身に、そのリーダーのために頑張りたいと思わせるだけの魅力があったからだと思います。それに加え、儒教思想独特の先輩後輩の絆があいまって、後輩が思わぬ力を発揮する。東洋には徳治主義の伝統があります。最も力の強い者が国を治めるのではなく、最も徳の高いものが治める。そうすれば国は安定し、国力は高まり続けることができる。

 

日本には「お神輿経営」という言葉がありますが、担がれるリーダーは、担がれるべくして担がれるから成立します。(お神輿経営でありながら担がれるに値するか疑問を抱かせる経営者も多いですが・・)そして、担ぐことで若手も成長できる。

 

北島選手や内村選手、太田選手がそれに値していたかどうかはよくわかりません。しかし、今回の経験を通じてリーダーである彼ら自身も、一皮むけて成長する可能性は高いと思います。こうして良きチームの伝統が引き継がれるのでしょう。

 

オリンピックを観戦しながら、日本的なリーダーシップと組織力についてつらつらと考えました。オリンピックはまだ続きます。どんな人間ドラマが見られるか楽しみです。

 

 

PS.マリナーズから電撃的にヤンキースに移籍したイチロー選手。アメリカでは、リーダーは担がれるものではなく、自ら環境を変えて後進に道を譲ると同時に新たな成長を目指すのでしょう。プロですから当たり前ですが・・。

このアーカイブについて

このページには、2012年8月以降に書かれたブログ記事のうち組織の能力カテゴリに属しているものが含まれています。

前のアーカイブは組織の能力: 2012年7月です。

次のアーカイブは組織の能力: 2012年10月です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。

ウェブページ

Powered by Movable Type 4.1