雑誌「人材教育」7月号が、「日本の経営人材育成を考える」を特集しています。私もこれまで、少なからぬ企業の経営人材育成をお手伝いしてきたので、興味深く読みました。
神戸大学の三品教授は、日本と海外企業の経営者を比較して面白い切り口を示しています。
・80年前後:日本の創業経営者 VS アメリカの専門経営者
(松下幸之助、盛田昭夫、本田宗一郎、豊田英二ら)
・90年代:アメリカの創業経営者 VS 日本の専門経営者
(ビル・ゲイツ、アンディ・グローブ、ラリー・エリクソンら)
・ 現在:韓国・台湾の創業経営者 VS 日本の専門経営者
結局、グローバル競争力の変遷も、経営者タイプに代表される企業の発展段階で解釈できるようです。(もちろん例外はありますが)
創業経営者と専門経営者の違いは、創業者は目的のために手段を選ばないのに対し専門経営者は、手段(プロセス)へ固執することだそうです。言いかえれば、会社の生き残りのためなら手段を選ばない創業者と、秩序重視から抜けだせない専門経営者ともいえるでしょうか。
創業社長が、後進に譲った後、業績不振からカムバックした例はたくさんあります。あまり見た目はよくはありませんが、それが創業者なのです。ヤマト運輸の小倉さん、ファーストリテイリングの柳井さん、スズキの鈴木さん、新生銀行の八城さんなどなど。創業者とそれ以外では、明らかに違うのです。
では、日本の既存大企業で専門経営者を輩出するにはどうしたらいいでしょうか?答えはひとつでしょう。組織の枠の中であっても、疑似的に創業者的役割を担わせることです。新規事業、事業投資先、関連会社など、大企業であればあるほど、その候補先はたくさんあることでしょう。できるだけ早い時期に、そこに放り込むのです。親元からの支援を最少にして。
かつての銀行は、取引先支援と称して若手行員を倒産寸前の企業に派遣しました。リクルートの元気がいいのは、どんどん新規事業を創らせ実質的に経営をさせるからでしょう。近年では、総合商社が投資先に若手を経営陣として多数送り込んでいます。
まだ実力も経験もない若手が、そういう境遇に追い込まれれば、いやでも勉強もしたくなります。そうなって、初めて経営人材教育(研修)の効果が期待できるのです。
同期でトップだから選抜教育を受けさせようなどという、トップや人事の配慮は、思うほど効果は上がらないでしょう。当然ですが、学習効果など、本人の意欲、もう少し言うと渇望感次第なのですから。