カッツが整理した、テクニカルスキル、ヒューマンスキル、コンセプチャルスキルの分類は、多くのビジネスパーソンの現場感にも合うのではないでしょうか。
ただ、前の二つはともかく、最後のコンセプチャルスキルと何かを一言で説明するのはなかなか難しいものです。概念化をどう説明しますか?
ある企業の経営者候補を対象とした研修でのことです。自分の担当する事業を、10分間で門外漢に説明するというアサイメントを課しました。具体的には、自分の担当する事業をよく知らない新任担当役員に、事業概要を説明し、投資含めたサポートを引き出すような場面のロールプレイです。
皆さん頭に入っていることですから、一見簡単そうですが、実はものすごく難しいです。多くの方は、ミクロの説明をします。相手の基本知識理解レベルを考慮しないでミクロの説明をし、日頃の活動を描写したところで、全く門外漢には伝わりません。
このアサイメントで、説明のうまい方は以下の力が優れている方だと思いました。
1) 相手の理解度合を理解し、チューニングしていく能力(セルフモニタリング&フィードバック力)
2) 論理的に整理し、説明する論理的思考力
3) 全体像を鷲づかみにし、枝葉をバッサリ切り捨て、骨格を理解する能力
4) 上記に付随して、どの骨をどう動かせば他がどう動くかを的確に捉える能力(システム思考力)
3)がまさにコンセプチャルスキルだと思います。人間は思考するには、まず理解しなければなりません。これは、自分自身も相手も同じです。
そして、複雑な事象を理解するには、概念化が必要です。人間は、相当の基本知識がない限り、概念化しないと頭に入りません。(ちなみにフレームワークの効用は、概念化を助けるところにあります。)
つまり概念化ができないと、相手に伝えることもできませんし、自分自身の思考を深めることもできないのです。
ここで、鷲づかみをイメージしてみましょう。空中の鷲は、地上の獲物めがけて一直線に急降下し、一瞬にしてわずか三本の指で獲物を掴み、急上昇します。空中では獲物を落とさないように、強靭な指で、獲物を固定します。
コンセプチャルスキルとは、このような無駄なく迅速に獲物の位置を捉える力、そして獲物が落ちないように、一瞬にして骨格を想定し、ポイントとなる部分を見つけ、そこに確実に爪を当てる力のことではないでしょうか。おかしな部分にどれだけ力を入れて掴んでも、空中では落してしまうでしょう。つまり、獲物を獲物全体として捉えるのではなく、骨格として捉えるわけです。この骨格に相当するものが、概念・コンセプトなのでしょう。
今、経営幹部候補にとって、鷲づかみにする力の開発は、最優先の課題だと思います。