ヒトの能力: 2013年3月アーカイブ

ヒトが本来持っている能力にもかかわらず、それが発揮できない状況になんらかの刺激を与え発揮できるようにすることが、「人材開発」のもともとの定義です。

 

ではなんで発揮できないのか?様々な理由はあるでしょうが、最も大きいのは「思いこみ」や「(必ずしも正しくない)常識」に囚われているからだと思います。それらは、かつては適切だったのかもしれませんが、現状にはフィットしない。にも拘わらず、それに縛られている。

 

縛るのは組織か自分自身のどちらかであり、それによって打ち手が異なります。自分自身の場合は、組織に対する不満や不安はいくいらでも口から出てくるのですが、実は自分を本当に縛っているのは自分自身なのだと気づくことが大切です。

 

かつての感受性訓練は、それを「強い外からの圧力」に身をさらすことで実現しようとしていましたが、そういうアプローチは現在には必ずしもフィットしないのでしょう。

 

もうひとつのアプローチは、守られた環境(場)に身を置き、新鮮な気持ちで普段とは違った思考をしてみることです。そこは、職場とは違って何を言っても責められない安全地帯であり、研修の場はその場として絶好です。「あれは研修だから・・・」ということで、何でも許すことができます。その前提があるため、派遣する側も鷹揚になれるのです。

 

そこでは、自分自身や組織を相対化してみることができます。自分とは異なる思考をする他者と対話するからです。それが他のメンバーであっても、外部講師でも構いません。そういった人々と真剣な対話を重ねることで、自分自身をもう一段階上から見つめて、位置づけることができます。日々の職場では、なかなかできないことです。

 

そういった場をつくるには、参加者にいくつかの姿勢が求められます。

 

1)疑ってかかる

普段の業務では、いちいち疑問を持ってそれを周囲にぶつけていては、仕事ははかどりませんし、第一嫌われます。だから、できるだけ疑問が少し芽生えても、「そういうもんなんだ」と自分に言い聞かせるようになります。研修の場では、そういう姿勢に抗います。

 

2)目線を上げる

組織で仕事をするには、自分の立場や役割を認識し、それに沿った言動が求められます。それが「常識」を浸透させます。研修の場では、そんな常識をとっぱらいます。そのために、(もちろん「下」ではなく)あえて「上」の目線を求めます。

 

3)ざっくり考える

目線を上げるとは、普段担当者目線でミクロに拘泥していた自分ではなく、よりマクロでものを見て考えることです。マクロで考えるということは、ざっくり考えるということです。ざっくり考えるということは、全体の中で優先順位を考えることですし、全体の中での重要な関係性を捉えることでもあります。

 

4)ロジカルに考える

全体の中の関係性を捉えるとは、ロジックのつながりを把握することでもあります。普段の仕事では、どうしてもロジックより「感情」や「慣習」に依存してしまいます。だから、あえてこの場では、ロジックをまず押さえて欲しい。その上で、必要に応じて人の気持ちを斟酌したり、過去からの経緯などを考慮すればいいのです。

 

こういうルールを研修の始めに確認しておくと、受講者の言動が目に見えて変わってきます。一種のゲームとして楽しめ、自分を相対化していける。

 

もちろん、また職場に戻れば、再び以前の思考プロトコルに戻ることでしょう。でも、一度でも「異なるプロトコル」を体験し相対化する経験を持てば、それまでの自分とは違う自分を意識できるようになります。ただし、その後どう変わっていけるかは、その人次第です。

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