ヒトの能力: 2010年9月アーカイブ

今、戦略理論に関する本をせっせと書いています。戦略と一言でいっても、その解釈は千差万別です。単語の後ろに「力」や「思考」をつければ、何でも本のタイトルになるように、最後に「戦略」をつければ、何でもそれらしくなって、30%くらい?高級になったと世の人は思うようです。だから結構大変です。

 

ところで、戦略論をいろいろ検討する中で、一つ腑に落ちないのが、「戦略(的)思考」を正面から論じた文献が見つからないことです。戦略を策定する上で、当然それに必要な思考法、あるいは思考パターンがあるはずです。でも、あまりないのです。あっても、読んでみると、たとえば外交交渉とかゲーム理論といった、戦略思考の一要素や使用場面を取り上げているにすぎません。

 

唯一見つけたのは、敬愛するミンツバーグの「戦略思考とは統合である」との論だけでした。これには深く納得しました。いわゆる戦略計画には分析つまり、「分解」が必要だが、戦略を創造するには「統合」が必要であり、統合する思考法が戦略思考というのです。多くの人は、論理的思考に長けた分析のプロが、戦略を策定できると考えているようですが、全くそうではありません。戦略コンサルタントという職種がありますが、彼らの80%以上は戦略策定なんてしていません。やっているのは、それに必要な分析をすることだけです。

 

では、戦略思考すなわち「統合」を分解するとどうなるのでしょうか?(言語矛盾しているみたいですが)それが分からないと、戦略思考を習得するヒントが得られませんね。

 

ジグゾーパズルをアナロジーにして考えてみましょう。ばらばらになったピースを、どうやって組み立てるのでしょうか?現実の世界では、使用するピースだけまとまって用意されてはいません。まずピースを創ることから始める必要があります。「創造」です。これが最も難しい。次に、創った多くのピースの中から、使用するピースを「選択」します。これもまた難しい。何を基準にしてピースを拾い上げるのか、理屈などありません。

 

そして、選んだピースを連結させて、組立てていきます。それには、どう「組立」るかの「構想」が必要です。では、どうやって構想するのか?

 

もし、戦略が合理的に策定できるとすれば、ここで「分析」が使えます。与えられたピースをグルーピングして、はまる部分を少しずつ広げていけばいいのです。しかし、現実の世界では各ピースの境界はいかようも変化するので、その思考ではだめなのです。ジグゾーパズルよりは、抽象絵画を描くのに近いかもしれません。確かに、出来あがってみれば部分はあるのですが、書いている時には部分は存在せず、全体しかイメージでいていません。

 

 

戦略思考とは、こんなことを頭の中で考え続けることなのでしょう。どうすれば、それができるようになるか。うーん、難しい。

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