ヒトの能力: 2010年6月アーカイブ

ワールドカップに入ってから、試合ごとに結束を高めていることが、試合内容から明確にわかりますね。前回ドイツ大会と大違いです。日本チームらしさというか、日本人の特性に合ったチームになってきているようです。キーワードで言えば、忍耐、組織、補完、きめ細かさといった感じでしょうか。三点目、ゴール前での本田から岡崎へのパスは泣かせました。

本田.jpg 

本田の試合後インタビューで、「思ったほど嬉しくない」という言葉が印象的でした。そこに彼の非凡さを感じます。4月の欧州チャンピオンズリーグ(CL)の順々決勝でインテル・ミラノに敗れた直後のインタビューでも、似たような発言をしています。CLの経験で得たものは何?との質問に、

 

「これからの取り組み次第ですね」と応えています。それに次いで、

 

CL1点取ったからといって、僕の中では何かが劇的に変わったということはない。僕にとっては、練習試合の1点と同じ」

 

「ポイントは昨日の悔しさ。これから僕のモチベーションになる。それが成長につながったとき、『あの経験が生きました』と言える」

 

「目標が明確になった。僕は毎日、こうなりたいというイメージを頭の中に描いている。でも、強い相手と1試合すると、そうやってイメージする以上に明確に、なりたい自分が見えてくる。『こうなりたい』が、『こうでなければならない』に変わる。昨日の試合がそれだった」(朝日新聞10/5/8朝刊)

 

 

人が成長するための内的動機づけの一側面として、達成欲求と学習欲求があります。達成欲求とは、文字通り目標を達成したいという強い気持ちです。ワールドカップで決勝トーナメントに進出したいという欲求ですね。学習欲求は、自分自身が成長したいという欲求です。前回のプレーより精度を上げたいとか、メッシみたいなドリブルがしたいとかです。達成の判断は、客観的にできるものがほとんどですが、思うような学習ができたかどうかの判断は、自分自身しかできません。つまり、自分自身に厳しく、かつ自分を客観視できなければなりません。

 

オリンピックで入賞した日本人選手が、直後に「今日の自分をほめてあげたい」とコメントをすることが近年多かったですが、彼ら彼女らには学習欲求より、達成欲求のほうが強いのでしょう。参加してそこそこ頑張るという目標は達せうした。

 

そこがアマチュアとプロの分岐点なのかもしれません。本田選手は、正真正銘のプロですね。だから、今日の勝利直後にはもう、次の学習目標に頭が切り替わっていたのでしょう。思ったほど喜べないのは、仕方ありません。

 

決勝トーナメントでの、日本チームのさらなる成長に期待しましょう。

このアーカイブについて

このページには、2010年6月以降に書かれたブログ記事のうちヒトの能力カテゴリに属しているものが含まれています。

前のアーカイブはヒトの能力: 2010年5月です。

次のアーカイブはヒトの能力: 2010年7月です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。

ウェブページ

Powered by Movable Type 4.1