ヒトの能力: 2010年2月アーカイブ

創造性開発は、日本企業にとって永遠のテーマといえるでしょう。先週の日経夕刊の連載されていた「人間発見」、MITメディアラボ副所長石井裕さんの回は、非常に興味深いものでした。

 

NTTで研究していた石井氏は、国際会議で講演した直後、米国の学者に声をかけられる。

「君はメディアラボに行くべきだ。君の美学はメディアラボが求めているものと同じだ」日本で発表しても、製品化にいくらかかるかとか、必要な通信量はどのくらいかだとかしか尋ねられなかったそうです。

 

ここに、日米の研究や創造性に対する考え方の違いが如実に表れていると思います。日本での関心は、製品化の可能性なのにたいして、アメリカ(MIT)では「美学」なのです。本当に創造的なアイデアは、美しいのです。それは、開発者の美学が、アイデアに込められているから。そして、研究機関自体も美学を持っている。創造と美学は、兄弟のような関係なのでしょう。

 

MITメディアラボに移った早々、石井氏は所長からこう言われます。

「MITでは、これまで取り組んできた研究のことは忘れて、全く新しいことをやれ。人生は短い。新しいことに挑戦するのは最高のぜいたくだ。」MB.jpg

MITが石井氏を評価したのは、彼の研究成果ではなく、彼の美学であり、才能なのです。過去の研究成果は、過去の環境におけるものであり、MITメディアラボという最高の環境であれば、もっと優れた研究ができるはずだとの、強烈な自信に基づいての発言なのでしょう。出来上がりを求めるのではなく、成長ののりしろを求める、素晴らしい態度だと思います。

 

 

そこでもまれた石井氏は、こう語ります。

「真の競争は100mを速く駈け抜けることではありません。競技のトラックもストップウォッチも、競技のルールすらない原野をただ一人で孤独に耐えて走り、そこに新たなトラックをつくっていくことにあります。」

なんと、かっこいい発言でしょうか!!こういう美意識を持ちたいものです。

「これからのビジネスパーソンには、コンセプチャル・スキルが重要だ」とは、いろいろなところで耳にするフレーズだと思います。

 

では、コンセプチャル・スキルって何?という質問に、どれだけの方が答えられるでしょうか?

 

 

「MBA経営辞書」(by Globis)によると以下だと説明されています。

コンセプチュアル・スキルは概念化能力とも呼ばれ、物事を概念化して捉えたり、抽象的に物事を考えたりする能力とされる。

 

これではよくわかりませんね。グーグルで検索してみましたが、他のサイトでも似たような説明でした。

 

 

「一を聞いて十を知る」という言葉があります。頭の良さの代表的な表現でしょう。なぜ、頭のいい人は十を知ることができるのか。

        仮説1:頭のいい人は、たくさんの知識を持っているので、一に関連する知識をすぐに引っ張りだして、相手が伝えたいことを類推することができるから

        仮説2:頭のいい人は、相手が今この場面で自分に一を言うに至った背景情報を推測し、いいたいことを類推することができるから

        仮説3:頭のいい人は、一の言葉から、自分に役立ちそうな概念を引っ張りだし、それと自分の頭の中にある概念を重ね合わせて、さらにその概念を自分に日常レベルの事象に解釈し直すことができるから

 

どれも理由としてはありえそうな気がします。上記3つの仮説は、重なりあう部分もありますが、私は特に仮説3が学習には重要であり、その能力がコセプチャル・スキルだと考えています。

 

優秀な営業マンは、どんなお客さんとも話を合わせることができるといいます。それは、単に世間話のネタとなる情報を常に収集しているだけでなく、お客さんの話を概念化して、それを膨らませて返せるからではないでしょうか。

 

ベテラン管理職が、最近の若手とは話が合わなく困ると嘆くのも、別に若手がおかしなことばかりを話すからではなく、その管理職のコンセプチャル・スキルが劣っており、概念化して理解することができないからではないでしょうか。

 

最近話題のTVドラマといった、若手と会話するためのネタを集めるのではなく、メタレベルで会話できるように訓練しましょう。(失礼しました・・・)

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