フェルメール展:やっぱりすごい!

| | コメント(0) | トラックバック(0)

もうすぐ東京での会期が終了することに気付いたので、慌てて昨日上上野の森美術館に観に行ってきました。

 

初めての時間枠予約制でしたが、いいですね。平日昼間とはいえ、観客が殺到するのは明らかなので、予約制は安心感があります。私は13時入場枠を購入。14時半まで入場可能で、その次は15時入場。入替制ではありません。

私は待ち時間なしで14時くらいに入りました。ロッカーの空きもあり、まあまあの時間だったでしょうか。

 

入場すると同時にイヤホンガイド渡し場所。普段はイヤホンガイドは借りないのですが、それも代金込み(2500円)なのでつい借りてしまいました。また、全展示作品の紹介文が記載された小冊子も、全員に配られました。これも代金込み。正直、あまり大したことはかかれておらず、ほとんど見ませんでした。フジサンケイグループが主催すると、こういう展覧会になるのだなと、妙に納得。絵画好きというよりも、フェルメールの名前につられてくる方を主な対象としているのがありあり。フェルメール作品をこれだけ持ってくるには相当の費用が掛かったでしょうから、こういった方式で入場者を増やすのは合理的と言えば合理的。でも、絵画好きにとってはちょっと複雑な心境。

 

さて、展示全49作品中39作品は、同時代オランダ作家の作品。それらが展示された5部屋を通り過ぎて、やっとフェルメール作品だけの部屋に辿り着く。驚いたのは、最初の5部屋も人だかりができていたこと。皆さん、イヤホンガイドと小冊子で、絵画の読み取りに専念のご様子。私はさっさと、人だかりを抜けて一目散に最後のフェルメール部屋に直行。フェルメールの8作品が一堂に会した部屋は、さすがにすごかった。(「赤い帽子の娘」だけは12/20で展示終了。代わりに、「取り持ち女」が1/9から展示。数年前にドレスデンで見た作品でした。)フェルメールの作品は、全世界で35作品しか発見されていないのに、そのうちの9作品を日本でみられるのは、確かに画期的なことです。

 

フェルメール作品は物語を感じさせます。観る者の想像力を刺激し、各々が勝手に自分でストーリーを思い描かせる力が、ものすごく強いですね。

 

wain.jpg

例えば、「ワイングラス」ではグラスをまさに開けようとする女性をじっと見つめる男性。片手は既にワインボトルに。早く注ぎたくてしかたない風情。リュートやステンドグラス。少しだけ乱れた卓上が意味深です。あと、床の市松模様が微妙に歪んでいます。手前の市松は奥のそれにくらべて、上から見た確度で描かれています。つまり、奥に比べて手前の床が少し落ち込んで見える。遠近法として不自然です。なぜ、あえてフェルメールはそんなふうに表現したのか。そこの想像力を刺激されます。ワインを飲む女性が、酔っていることの表現か、はたまた女性が「堕ちていく」ことの暗示か。空間がゆがんでいるのです。

 

歪んでいるのは空間だけではありません。時間も歪んでいる。ワイングラスは、ほぼ飲み干されており空に見えます。であれば、もっと女性はグラスを傾けている(120度くらい?)はずです。でも、そうはなっておらず、75度くらの角度しかついておらず、不自然です。女性は、空になっているにも関わらず、グラスを口から離したくない。離すと男性から注がれてしまうからか。必死の抵抗に見えなくもない。そういった女性の気持ちが、あるはずのないワイングラスの確度に表現され、また女性がいやで長く感じる時間をも描いているように、私には思えます。

 

有名な「牛乳を注ぐ女」の牛乳の流れと壷の角度のズレも、フェルメール

300px-Johannes_Vermeer_-_De_melkmeid.jpg

の意図を感じます。本来、壷の底に少しでも牛乳が見えていないとおかしい。観る人は、その微妙なずれに視点を集中してしまう。その時に脳の中で傾く壷と牛乳の流れが動き出す。私は動きを感じました。つまり、フェルメールは絵画でありながら動画を観るような効果をつくりだしたように思えるのです。

 

他の作品についても、いろいろ想像が膨らみますが、このくらいにしておきます。ホンモノの作品は、やはりすごい!!イヤホンガイドや小冊子に頼ると、こうした想像力がはたらかなくなってしまわないか心配です。それは、本当にもったいないことです。

トラックバック(0)

このブログ記事を参照しているブログ一覧: フェルメール展:やっぱりすごい!

このブログ記事に対するトラックバックURL: http://www.adat-inc.com/cgi-bin/mt-tb.cgi/763

コメントする

このブログ記事について

このページは、ブログ管理者が2019年1月29日 11:37に書いたブログ記事です。

ひとつ前のブログ記事は「映画「ディア・ハンター(4K)」を観て」です。

次のブログ記事は「組織変革と物語」です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。

月別 アーカイブ

ウェブページ

Powered by Movable Type 4.1