五感を使って

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人間は五感を駆使して外部から情報を受容して、認知システムや情動に取り込んでいきます。ただ残念ながら、我々はそのうちの一部の受容器に偏っているように思えてなりません。特に視覚です。そして視覚の中でも特にテキスト情報への依存度が圧倒的に高い気がします。

 

最近のTV番組には、テロップ(字幕)が頻繁に出てきます。聴覚障害者への配慮とはどうも思えません。流れる文字にどうしても本能的に視線が向いてしまいます。敵を発見するための、動物としての本能です。

 

文字を追うことで、映像や音声からの情報量は必然的に減ってしまいます。それにも関わらず、テロップを挿入するのはなぜなのでしょうか?

 

五感を駆使する機会が減り、その能力を失いつつあるのではないか、そんなことを気付かせてくれる映像に出会いました。

 

 

6/23の朝、何気なくTVを付けたら「沖縄慰霊の日」の式典が生中継されていました。しばらくして始まった、地元中学三年生の自作の詩の朗読に括目させられました。

sagara.jpg

 

https://mainichi.jp/articles/20180623/k00/00e/040/310000c

 

この毎日新聞の記事にある動画にはテロップがついています。また、下の方には詩が文章(テキスト)で書かれています。

 

以下の順番で読む(観る)ことをしてみたら面白いと思います。

・まず、文章で詩を読む

・次に動画を、字幕を追いながら観る

・最後に動画を、字幕を隠して(手前に本を置いたりして)観る

 

いかがでしょうか?

テキストが、いかに豊かな情報を圧縮してしまっているかが実感できると思います。テロップの弊害も。一方で、機会さえあればまだまだ受信する力は保持できそうな希望も持てる。

 

なにより、この詩を書いて朗読した相良倫子さんの表情と声は、この詩を書くに至った思いなどの膨大な情報を発信しています。それを、視聴者である私たちは精一杯にアンテナを広げて受信できる。もし現場にいたら、それこそ五感をフル回転してもっともっと受容し、刺さったことでしょう。人間の能力って素晴らしいですね。

 

ところで、相良さんのすぐ後に、首相が祝辞を述べました。残酷なほど乏しい情報量で、ほとんど受信できませんでした。

 

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このページは、ブログ管理者が2018年6月26日 15:26に書いたブログ記事です。

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