「トヨタ物語」を読んで

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日経ビジネスに連載されているときから熟読していた野地秩嘉著「トヨタ物語」の単行本を、読みました。力作です。著書はトヨタ公認のもと7年間に渡って取材を続けたそうです。OBや作業者の声がたくさん盛り込まれており、非常にリアリティがあります。

 

トヨタ生産方式の本質、どのように出来上がったのか、なぜ可能だったのか、がよく理解できます。


ケンタッキー工場(トヨタ初の海外単独工場)立上げ当初、ラインを15時間止めた米国人現場リーダーは、翌朝張工場長のところに出向くよう指示されます。クビになると思い一睡もできなかった。翌朝張さんのオフィスへ。(ここから引用)

 

「ラインが止まったこと、私がした処置について、いろいろ聞かれました。

話が終わり、いよいよ解雇を宣告されるのだなと思った瞬間、彼は私の手を強く握って、そうして、頭を下げるのです。

『ポールさん、うちの工場はできたばかりで大変な時期です。15時間、つらかったでしょうね。おかげさまで復旧しました。ありがとう。これからもあなたたちにはずっと助けてもらわなくてはなりません』

私は思わず泣いてしまいました。」(中略)

「トヨタ生産方式とは考える人間を作るシステムです。」と付け足した。

「考えることを楽しいと思う作業者には向いている。現場でカイゼンできることはアメリカの作業者にはなかった経験だからだ。ただし、時間を切り売りするだけの作業者には適応できないだろう。これまでの生産方式は、人間に考えなくてもいい、手や身体を動かしておけばいいというシステムでした。しかし、オーノさんは考えて仕事をしろと言ったわけです。それがこのシステムの特徴です」

 

プロローグに書かれた、このアメリカ人作業者(1988年のケンタッキー工場操業開始時から働き続けている定年間近の60歳)の発言に、本質が語られていると思います。

 

トヨタは、戦後アメリカのビッグ3が日本市場に本格参入したら潰れると本気で危機感を抱いていました。だから、ビッグ3に対して極小のトヨタが生き残るために、必死で様々な工夫をしてきました。そのひとつが、このトヨタ生産方式。物量でも資金力でも規模でも圧倒的に劣るトヨタが生き残るには、人の知恵を最大限引き出すしかないと考えたのです。

 

そうして一定の成功を収めたトヨタですが、そのやり方を果たして本場であるアメリカや他の国々に移植できるか、大きな賭けだったことでしょう。経営学の理論でいえば、現地のやり方に適応するほうが賢明だったかもしれません。しかし。トヨタ生産方式の本質にある人間観は、世界共通だと考えたのでしょう。あえて適応しない道を選びました。NUMMI最初のトップだった池渕氏はこう語っています。

「人間は自由度を与えると、仕事をしたくなるんですよ。トヨタ生産方式は強制ではなく、自由を与えるものです。だから生産性が向上したんですよ。」

 

トヨタ生産方式は革命だと言われますが、本当にそうだと思います。トヨタ以外に、世界に通用するモデルを築いた日本企業はあるでしょうか。他にはセブンイレブンくらいしか思い浮かびません。オリジナルなやり方で国内で成功を収めても、海外では現地に適応してしまうケースが多いのではないでしょうか。経営陣のリーダーシップの問題なのかもしれません。トヨタやセブンに続く日本発の真の改革者が登場することを期待します。


トヨタ物語
野地秩嘉
B0797PKLQF

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このページは、ブログ管理者が2018年2月14日 11:14に書いたブログ記事です。

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