「組織」を考える

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近頃またまた日本組織の不祥事や失敗が頻発しています。日産、神戸製鋼といった日本を代表する企業で「インチキ」が行われてきたとのこと。いずればれるとわかっているのになぜ?不思議です。また、希望の党の小池代表。「さらさら受け入れる気などない。排除する」との発言。実際そうだとしても、その発言が生まれたばかりの党組織や有権者に与える影響をどう考えたのか。どちらの例にしても、適切な組織マネジメントができないから起きた事象だと思います。

 

「組織」という言葉はとても多義的であり、簡単には説明できませんが、私が一番ピンとくるのは、こんな定義です。

 

複数の個人が相互関係を結ぶと同時に、それがまた個人を変化させる絶え間ない循環過程

 

つまり、組織図のような静態的なモノではなく、常に変化し続ける「状態」だという理解です。また単なる個の「集合」ではない組織であるからには、共通の目的と協調の意志とコミュニケーションが必要です。言い方を変えれば、皆の求心力となる「神話(物語)」が必要です。人類は150人くらいまでなら、リーダーが全員の顔を覚えられ影響力を直接行使することができるそうです。しかし、それを超える組織となるためには、共通の「神話」が必要です。さらには、構成する個人が常に情報交換を行う開かれた認知システムを持ってなければ相互関係を結べません。

 

このように組織を捉えると、トップダウンで組織を動かすことがいかに難しいかイメージできます。かつての軍隊組織であれば、トップダウンの組織運営が機能しましたが、その軍隊も不確実性が高いテロとの戦いではもう機能しないそうです。軍隊ですら機能しないのであれば、なおさら企業組織では無理です。

 

しかし、ほとんどのビジネスパーソンの頭の中では、旧式軍隊の組織がいまだに会社組織の中でも無意識にイメージされているのではないでしょうか。例えば、上司の指示で部下は動くのが当たり前と考えるように。経営学は戦略論も組織論も軍隊を参考に始まっているので、無理ないかもしれませんが、軍隊は例外的組織であり、現実は大きく異なります。

 

自転車の運転と自動車の運転の違いに近いでしょうか。自転車に乗れるからといって、すぐには自動車の運転はできない。とはいえ、見よう見まねでとりあえず自動車を動かせるようにはなるかもしれません。しかし、不安ですね。なぜ自動車は動くのか、どこをどう動かせばどう作用するのか、どんなリスクがあるのか、といった知識を知っておいたほうがいい。だから免許制度がある。

 

軍隊組織は自転車の運転のようにシンプルです。規律を強制することで、刺激と反応が直結するからです。しかし、現代の企業組織はもっと複雑です。刺激と反応の関係もよく見えない。

 

大きさに関わらずリーダーとは、「組織」という自動車の運転手。考えてみれば恐ろしいことです。自動車が動く理屈も知らず、教官に同乗してもらっての試験運転もせず、いきなり自己流で高速道路を運転するようなもの。猛スピードで、突然現れる他の車や障害物や道路規制あるいは故障などの突発事態に、瞬間的に自らの判断で操作できるような準備が必要です。しかも、かつては広々と見えた道路も、今では窮屈で運転技術も以前より高いものが求められるようになりました。

 

個人の集合体が組織になるわけですが、単純合計ではない。単なる個人と、組織に属する個人では、自ずと性格が異なります。(呑み屋にいけば観察できます)また、組織自体がまるで人間のような行動をとることもあります。(企業の暴走と構成員の暴走は別物です)

 

日本人は集団主義的だから組織での戦いには強い、という神話がありましたが、もうあまり信じる者はいない。今、あらためて「組織」が生成し行動するロジックと、それを踏まえた適切な運営手法について、深く考えてみる必要がありそうです。

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このページは、ブログ管理者が2017年10月17日 14:40に書いたブログ記事です。

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