金沢訪問

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先週の土日で、金沢に遊びにいってきました。初めての訪問でしたが、予想以上に面白かったです。

 

金沢21世紀美術館を訪ねることが主目的でした。約10年前に開館した話題の現代美術専門の美術館です。街に開かれた美術館としても有名です。建築自体もそのコンセプトを体現しており、美術館特有の重厚さと正反対で、今にも空中に浮かんでしまいそうな白いUFOのような形。周囲は360度透明なガラス張り、外から中がよく見えます。

 

驚いたのは客の多さと客層です。いくら連休とはいえ、特別な企画展をやっているわけでもないのに、入場に30分以上並びました。並んでいるお客さんは、ほとんどが20代から30代くらいの「若者」か、小さな子供のいる家族連れです。東京の美術館では、いつ行っても団塊世代の集団に圧倒されるのですが、全く異なる雰囲気。しかも、私たちのような観光客とおぼしき人は多くはなく、ほとんどが地元の人たちのようです。地元の手近な遊園地というイメージでしょうか。

 

そもそも伝統工芸のイメージが強い金沢で、現代美術がここまで浸透していることがすごいことです。開館当初は、地元工芸家との間で軋轢もあったようです。現代美術館であれば、自分たち「現代」に活動でしている工芸作家の作品を展示できるとの期待もあったようで、思い違いもあったとか。しかし、あえて伝統工芸の街に現代美術館を建てると決断した、当時の市長の洞察力は大したものだと思います。沈滞する工芸への刺激も期待してのことだったのでしょう。美術館の努力もあり、今では工芸作家との連携も図られつつあるようです。

 

たまたま乗ったタクシーの運転手はこう言っていました。「21世紀美術館には、作品はあんまりないよ。古いいいものをも見たいなら、近くの県立美術館に行くといい。それから、すぐ隣の能楽博物館にも是非寄ってみて。こっちには全然客が来ないと、そこの職員が嘆いていたから。」

 

やはり地元では21世紀美術館をよく思っていない一定の層がいるみたい。また、私が能には興味があると言うと、

「そう、私はこう見えて能楽師なんですよ。」と言うではないか。なんで能楽師が運転手をやっているかはあえて聞きませんでしたが、文化レベルの高い街なんだと感心しました。


ところで、土曜の昼前に金沢駅についてすぐ、バスで「ひがし茶屋街」を訪れました。金沢の観光写真では必ず使われる街です。小さなエリアに多くの観光客が集中しテーマパークのようでしたが、ちょっと路地を入るとお茶屋さんらしき古い建物があり風情があります。壁に「金沢おどり」のポスターが貼られていました。見ると今日の13時と16時にも公演があるじゃないですか。91518日の四日間が会期です。金沢おどりとは、ひがし・にし・主計町の3茶屋街合同で、芸子さんが普段磨いている芸を大きなホールで一般の方にも披露する機会です。数年前京都祇園で「都おどり」を見たこともあって、急遽16時の回を観にいくことにしました。

 

バス渋滞のため、会場の県立音楽堂邦楽ホールには10分遅れで到着。入口で一番安い自由席を購入しようとしたところ、同じ値段指定席にしてくれました。いい席に空席が多いとみっともないからということで。でも、入ってみるとほぼ9割方は埋まっています。

 

失礼ながら、この規模の地方都市でどの程度の芸子さんがいるのかと思っていたのですが、驚きました。皆、芸のレベルが高い。都おどりでは、一部学芸会かという出演者もいましたが、金沢では全く違いました。これだけの芸を磨いている芸子さんが多数いるということは、それだけそれにお金を払う旦那衆がいるということです。

 

途中の休憩時には、ロビーが地元名士たちの社交場となっていました。着物の男女も多く、皆知り合いみたいです。カジュアルな恰好の私たちは、場違いだったことは否めません。でも、そこにいる人々を観察するだけで興味深い。地元に花街が根付いていることが見て取れます。金沢では、経済に占める東京などの大資本の割合が比較的低く、地元資本が強いそうです。老舗の商店やニッチで強い中小企業が元気で、経済が金沢の中でほぼ完結できるらしい。江戸時代の藩はどこもきっとそうだったのでしょうが、金沢はまだその気風が残っているのでしょう。

 

古いものを大事にしつつ、現代美術のような新しいものを取りいれる(軋轢はあっても)寛容さも持っている。決して外に向けてのショーケースではなく、そこで実際に生活も経済も完結できる。京都とはまた少し異なる優れたモデルだと思います。ちなみに金沢の人は「小京都」と言われることを嫌うそうです。「あちらは公家ですが、うちは武家ですから」と。

 

料理もおいしかったですし、蟹の美味しいシーズンにまた行ってみたいです。

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このページは、ブログ管理者が2017年9月20日 11:52に書いたブログ記事です。

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