「ラ・ラ・ランド」を観て

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あり得たかもしれない現在。これほど人間にとって、無意味なものはないでしょう。しかし、ほんの一瞬それが頭をよぎることもあるのも人間です。だが、また一瞬でそれを頭から打ち消し、日常に舞い戻る勇気も持ち合わせている。

 

昨晩、やっと昨年アカデミー作品賞をとった本作を観ました。毎年原村で夏休みに開催される「星空の映画祭」という催しの、夜8時からの屋外上映会でした。

 

この作品は、過去の有名なミュージカル映画作品を、いくつもオマージュしています。「雨に歌えば」「バンドワゴン」「パリのアメリカン人」、「レミゼラブル」までありました。かつて栄光を極めたミュージカル映画を現代にも復活させようという意図もあるのかもしれません。(映画の中では、それがJAZZだった)

 

ハリウッドで夢を追う男性と女性。男は売れないジャズピアニスト。女は女優を目指すも、オーディションで落ち続ける女優のたまご。この二人の叶わなかったラブストーリーです。男は正統派ジャズの衰退を嘆き、ジャズの復興を図るためのジャズ演奏を聴かせるお店を持つことが夢でした。

 

男は女との生活のために、自分の志向には合わないバンドに入ることを決意。予想に反してそのバンドが大成功。レコーディングとツアーに追われる生活に。次第に女はそんな初志を忘れた男の行動が許せなくなります。会えない寂しさもあってある晩衝突。男は言ってしまう。「君は優越感を得るために、不遇を囲っていた俺と付き合ったんだろ。」

 

女は最後のチャンスと思っていた自ら脚本・主演の一人芝居の自主公演で失敗。女優の夢を捨て実家に帰ってしまう。男はバンドを辞め細々と食いつなぐ生活。そんなある日、女宛てにかかってきた電話を取る。それは女の自主公演を観た配役ディレクターから、パリで撮影する映画のオーディションへの誘いでした。男は夜通し車を走らせ女の実家へ行き、吉報を伝えるも女はもう惨めな思いは味わいたくないと拒否。今度は、男が諦めるなと説得し、二人で会場に向かった。合格した女に男は、パリでの長期にわたる撮影中は仕事に没頭すべきで、会うのはよそうと告げた。

 

♪そして5年の月日が流れ去り(指にルビーの指輪を♪、じゃない)有名女優となった女は、ある夜小さな娘を預け夫と出かけた。渋滞に疲れた二人は、予定を変え食事に。その後、何気なくふとジャズバーに入るとそこには、ピアニスト兼店主となった男が舞台に立っている。女に気づいた男は、女と初めて会った時に弾いていた曲をひとり奏でる。その演奏のあいだ、映画は「あり得たかもしれない5年」を空想シーンとして延々と描く。観客も共感し、そうなっていればと想像したことでしょう。しかし、映画は現実に戻る。席を立つ女と目が合った男は、深刻な表情から一転、微笑んで夫妻を送り出す。

 

こういう物語です・・・。男にとって、5年ぶりの一瞬の再会、さらに「あり得たかもしれないとき」をその瞬間に空想することは、男がこれから生きていく上で、どのような意味を持つのか。もう一歩を踏み出すのに必要なステップなのだと思いたい。

 

そんなことを考えながらエンドロールを眺めていると、突然激しい雨が。なんというタイミング!自然は感慨に耽ることを許さず、突然現実に引き戻されました。

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このページは、ブログ管理者が2017年8月13日 12:44に書いたブログ記事です。

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