毎号「文藝春秋」に連載されている塩野七生さんのコラムは、立ち読み含めて愛読してきました。ローマから世界や日本を客観的に見つめるその視点は、やはり新鮮です。
最近それらが新書にまとめられ出版されましたので、あらためて読んでみました。
日本人へ リーダー篇 (文春新書)塩野 七生

それぞれの時の出来事に関するコラムが多いので、少し懐かしくもありますが、本質は全く古くはなっていません。かえって、その後の出来事を知っているだけに、彼女の洞察力に驚かされます。
珍しく企業の人事政策、しかも成果主義について書いてあるコラム(成果主義のプラスとマイナス)があります。これが、とてもいい!
彼女は人間を3種に分類しています。
① 刺激を与えるだけで能力を発揮する人(2割)
② 安定を保証すれば能力を発揮する人(7割)
③ 刺激や安定を保証しても成果を出すことができない人(1割)
そして、戦後日本の成長は、他の国々が①に頼っている時期に②を活用したことにあると喝破します。しかし、時代が変わるとそれも変えなければなりません。そして、②の人々に①の人々にしか要求できないことを一斉に求めた。それが成果主義だというのです。・・・なりほど、です。
その弊害として3点挙げています。
A)①と②の差は、能力の絶対差ではなく、質の違いだということを無視した。従って、安定を保証されなくなった②の生産性は低下してしまった。
B)腰を据えて一つのことに集中するという、日本人の強みを崩してしまうリスクがある。
C)成果を上げることしか考えない人が犯しやすい、拙速につながる危険性がある。
どうでしょう。非常に人間を洞察した意見ではないでしょうか。「経営は人なり」と、どの経営者も言います。しかし、このような人間に対する洞察をもって人に対峙する経営者やマネジャーがどれだけいることでしょうか。