ブックレビュー: 2010年10月アーカイブ

戦略は直観に従う ―イノベーションの偉人に学ぶ発想の法則
ウィリアム ダガン William Duggan
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A.自分を信じ、明確な目標を設定し懸命に努力すれば、どんなことでも成し遂げることが可能だ

B.機会に備え、機会を見極め、機会に基づいて行動すれば、多くのことを成し遂げることが可能だ

 

これがコロンビア大学ビジネススクールのウィリアム・ダガン准教授が、必ずクラスの最初に学生の聞く質問です。ほとんどの学生がA.と答えるそうです。きっと日本でも、ビジネスを学ぼうとする人のほとんどはそう答えるでしょう。かつて私もA派でした。

 

未来がある程度予測できる社会ではAが有効だと思います。だから、的確な目標もビジョンも立てることができ、現状とのギャップを埋めるための努力の方向もやり方も理解できます。ある部分の効率化や工場の生産性向上といった線形型の問題であれば、現在でも適用可能でしょう。しかし、現在多くの問題は、非線形で不確実性も高まっています。したがって、問題設定する容易ではありません。ましてや、例えば個人のキャリアといった個別性も不確実性も高い問題では、A.の思考は危険ですらあります。数年前まで安定して花形ともてはやされた企業が倒産する時代です。明確な目標も設定して頑張っていた人ほど、そうならなかった時のダメージは大きいでしょう。「折れてしまう」かもしれません。

 

よく考えてみれば、過去の偉大な成功者たちは、意外なほど目標をころころ変えたりしています。最初から成功後の姿が思い描けていた人は皆無でしょう。

 

これからの時代は、B.の思考がもっと見直されるべきでしょう。しかし、機会に備えるとはどういうことで、見極めるための選択眼はどこからくるのか、などの疑問が生じます。そこでの重要なスキルはダガン氏のいう「戦略的直観」です。これまでは合理性に基づく分析の時代でした。分析とは、分解していって正解を見つけ出すこととも言えます。直観はその反対に、必要な事象を結びつけていく思考です。それを身につけるには、出来るだけの多くの先人が蓄積してきてくれた知識や理論を習得しておくこと、しかしそれにはこだわらず空っぽの頭で世界を見て捉えること、そしてそれらの結合を待ち、ひらめいて行けると評価したら、周囲の騒音に惑わされず強い意志を持って実行することです。もし、違うと分かれば、固執しないで変更すればいいのです。最大の敵は、思いこみや常識、固執です。

 

ダガン氏の「戦略は直観に従う」を読んで、これまで何となく感じていたことに確信を得た思いです。

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