問題解決よりも問題発見の方が難しいとも言われています。しかし、問題解決のための手法は様々開発されているにもかかわらず、問題発見の手法は聞いたことがありませんでした。
問題解決には、主に論理思考を使うため手法も開発されやすいのです。原因を分析して、それぞれに対応する解決策をできるだけたくさん考え出す。そして、多くのオプションから評価基準に従って優先順位づけする。そんなプロセスですから、論理思考が欠かせません。想像的なオプションを見つけるにも、論理思考に基づく徹底的な分解が必要なのです。
一方、問題発見では、論理思考だけでは足りません。問題発見とは、問題を適切に定義することですが、それが難しい。論理は既存の枠組みで通用するものであり、そんなモードで問題発見に取り組んでも、なかなか斬新な問題の再定義はできないからです。そこで、創造性が不可欠になります。
昨日アカデミーヒルズで開講した 「問題解決のためのクリエイティブ発想」では、その難題に西田講師がチャレンジしました。効果的な問題発見のための手法はあるのか?
結論から言えば、有効と思われる手法はありました。
受講者の一人から現在抱えている問題を出してもらいます。具体的には、「どうすればわがままなゆとり世代の部下を指導できるか」というものでした。
そして問題提示者に対する質問者を二名募りました。ファシリテータを務める西田講師含め、4名チームで実際に試してみました。
ファシリテータは、あるチェックリストに従って、問題提示者に質問を投げかけ回答を引き出します。二人の質問者は、そのやり取りを受けて自由に問題提示者に質問できます。ただし、質問のみで意見は不可です。
そして最後に、質問者とファシリテータが、図などを使って問題を構造化し、問題の再定義を行うのです。詳細は省きますが、問題提示してくれた方にとって、有益な再定義が出来たようです。その方は、嬉々とした表情でホワイトボードに書かれた三つの図を、大事に写真にとって持ち帰りました。
チェックリストは、
1. 問題解決の意義の確認
2. 情報の整理
3. 問題の分解
4. 問題の構造化
5. 類似の構造の想起
6. 問題の再定義
こういうもので、特に目新しいことはありませんが、実際にやってみるとパワフルでした。
問題を適切に構造化できれば、真の原因や問題が発生するプロセスが見えてくるため、これまで見えなかった問題の再定義もしやすくなるわけです。
しかし、「問題の構造化」が実はものすごく難しい。訓練されたコンサルタントと一般のビジネスパーソンで差が最も大きいスキルは、この「問題の構造化」スキルだと確信しています。これまで多くの研修受講者を見てきましたが、驚くほどこのスキルを持つ人は少ない。それほど普段の仕事では使っていないのでしょう。
では、どうやって今回の質問者は、構造化できたのか。ファシリテータとの対話を聞いている質問者は、いろいろな疑問が浮かんできます。意見を言ったりファシリテートする必要がないので、無責任に思いついた疑問をぶつけられる。
疑問とは構造化する重要なきっかけです。質問者は、漠然と「問題の構造」を仮説として持っており、それを質問することで仮説検証し、その精度を高めていくのです。しかも、自分だけではなく、他の二人も同じように質問を投げかけるので、一人で考える場合の三倍の仮説検証ができるとも言えます。自由な発想、自分自身での仮説検証、他者による仮説検証情報、これら三点が効果を発揮するベストバランス(ほど良い規模)が、この4人チームによる問題発見(再定義)手法だと思います。
これまで「問題の構造化」は、原因探究や解決策立案において使われるものだと思っていましたが、「問題の再定義」に使うという発想に目から鱗が落ちました。そして、それを効果的に行う仕掛けにも。
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