人事の世界を、大きくはハードHRとソフトHRに分けることができます。ハードHRとは、人事制度、評価・報酬システムなど主に制度やルールで、社員の人事管理を行うものです。一方ソフトHRは、主に能力開発、研修、企業理念など社員のスキルや意識にはたらきかけ、個人や組織が好ましい姿になることを支援するものと言えるでしょう。ひらたく言えば、人事部門と人材開発部門といってもいいかもしれません。
先日お会いした、ある企業の人材開発センター長が、「両者の違いは、性悪説に基づくか、性善説に基づくかだ。」とおっしゃったのが印象に残りました。
その会社も、以前は人事部門と人材開発部門は同じ組織にあったそうですが、根本的な思想が合わず、分離したのだそうです。
確かに、人事制度を構築する際、「社員が怠けないように、どんなルールを作ろうか」という考えがベースにあるような気がします。少なくとも、制度を悪用する社員が出ないように詳細を詰めることは間違いないでしょう。
一方、人材開発を企画・設計する上では、「どうすれば、社員がもっと活き活きとし、、成果が上がるようになるだろうか」とまず考えるのではないでしょうか。ベースには、うまく環境を整え刺激すれば、本来持っている能力を発揮してくれるとの前提があります。
非定型業務主体で創造性が求められるナレッジワーカーを対象とすれば、「最後の砦となる人事制度で規律を」求める人事と、「自律性を促し、創造の支援をする」人材開発との間に、コンフリクトが生じるのは当然です。
とはいえ、大きな流れは「人事管理から人材開発」と言って間違いないでしょう。個の能力を解き放つ人材開発の重要性は、ますます高まっていきます。
このような状況のもと、経営陣や社員の期待に人材開発部門が応えていけるかどうか、まだまだやるべきことは多いと言えるでしょう。
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