カナユニが閉店

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赤坂見附のレストラン「カナユニ」が、今月26日で閉店だそうです。私にとって大切なお店でした。

 

開店は50年前の1966年。今も店に立つマスターの横田さんが、26歳で始めたそうです。私が初めていったのは、大学生だった1980年代半ば頃、もう30年にもなります。通っていた大学が四谷だったので、赤坂見附は裏庭のような感覚でした。当時、赤坂見附の飲食店でアルバイトをしたいと思いたち、どの店にしようか何軒かに入ってみました。バイトしたいと探したのは、「大人が楽しむ本物のお店」。今思えば、ずいぶん無茶でえらそーな行動です。

 

そんな中に、カナユニがありました。重々しい鉄の扉を開けて、地下に降りていくとき、少々緊張したことを覚えています。ジャズの生演奏が流れる薄暗い店内は、まるで映画「カサブランカ」でハンフリー・ボガード演ずるリックが経営するリックス・カフェ・アメリカのようだと感激。お店の方々も、皆さんカッコよく、しかも私のような一見の小僧にも丁重に応対してくださる。なんて、大人でかっこいいお店なんだろうと思いました。

 

では、カナユニでバイトしたのか?それが、できませんでした。悲しいかな、こんな素敵な店で働く自分をイメージできず、気後れしてお願いすらできなかったのです・・・。今思えば、ずいぶん勿体ない。(結局、ホテル・ニューオータニの一階、清水谷公園向いの「リトル・パイレーツ」でバイトしました。)

 

しかし、その後も大切な店として、折々に伺いました。例えば、あれは私が就職して2,3年後でしたか、名古屋に住む姉が結婚したばかりの夫(義兄)と職場の友人数人とで東京に遊びにきたとき、張り切って夜カナユニに連れていきました。ただ、残念ながら予約していなかったため満席で入れず。しかし、マスターの横田さんは申し訳ないと、「近くの喫茶店で待っていてください。席が空いたらお呼びします」と言って下さったのです。コーヒー代まで出してくださいました。私が初めて「おもてなし」を実感した瞬間だったかもしれません。

 

初めて本当のサングリアを飲んだのもカナユニでした。フロアの浅見さんは、いつでも楽しく応対してくださいました。驚くことに、お店の主要なメンバーは、30年前に初めていったときと同じです。浅見さんの髪はいつの間にか、グレーヘアに変わっていましたが(そう言う私の髪もですが)。お店の人たちの人柄と入れ物としての空間が融合、熟成したオーセンティックなレストラン。

 

まだまだ、大切な記憶がたくさんありますが、このくらいにしておきます。またひとつ、プロが営む宝物のようなお店がなくなってしまう。残すべきものと無くすべきものが、どうも違っているのではないかと、切なく思うのです。カナユニの皆さん、ありがとうございました。50年間ご苦労様でした。


(1966年にマスターが26歳で始めたということは、私が初めて店でマスターにお会いしたときマスターは40代半ば。今の私よりずっと年下。あー、情けない・・・)


(写真は、日経レストラン2011年6月9日から引用しました。3.11の夜のいい話載ってます。)

20110609_01.jpg

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このページは、ブログ管理者が2016年3月15日 11:31に書いたブログ記事です。

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