コミュニティーの難しさ

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先日私の住むマンションの、年に一回の管理組合総会がありました。今回は、予算などの定例議題に加えて、電気代節約に関する議題が提案されていました。

 

マンションで使用する電気は、当然のことながら東京電力から各戸が購入しています。それを、オリックス電力からマンション全体で一括購入することにより、共有部分の電気代を安くできるという話です。各戸占有部分は値下げの対象になりません。しかし、専有部分の電気代もオリックス電力から購入する契約で、10年間は解約できません。近々始まる電力自由化に伴い、安い電力会社を選べるようになるかもしれませんが、オリックスと契約した時点で10年間それはできなくなります。また、この契約を結ぶには全戸承諾が必要です、また、年に一度、点検のため数分停電させる必要があります。

 

一括購入による共有部分の電気代削減額は、およそ59万円と見積もられました。これは約10%の削減にあたります。全70戸なので、一戸平均で約700円の節約。日本の二人世帯の月平均電気代は約9千円なので、7.8%の削減率です。(ちなみに我が家の月平均電気代は約5千円なので、約14%の削減効果)

 

参考までに現在公表されているENEOSでんきで我が家の節約額をシミュレーションしたところ、月平均で353円の削減と出ました。

 

さあ、どうしましょう??

 

総会での発言は、ほとんどが反対意見でした。いわく、

「停電したらタイマー設定などやり直す必要があり、年寄には無理」

「オリックス電力が事業撤退したらどうなる?」

10年間も縛られるにはいや」

「将来安い電力会社が出たときに契約できないのはいや」

「室内の配電盤の工事が必要とのことだが、今そこに大きな荷物が置いてあり、動かすのが大変」

 

結局、議決はされませんでした。一人途中退席してしまったことで、3/4の定数に一人欠けてしまったからです・・・・。

 

ところで、この件の難しさは、複数のトレードオフがあったことです。

 

・個人(専有部分)のメリット VS マンション全体(共有部分)のメリット

・将来のメリット可能性 VS 10年間の確定メリット

・個人のデメリット(手間)回避 VS 他者(契約希望者)のメリット

 

これがもし企業だったら、削減額の見積もりを判断材料に一括契約締結となる可能性が高いと思います。700円と353円の差は大きいですし、いくら今後自由化で安い新規参入が増えたとしても、今の見込みの半額が10年以内に実現される可能性は低いと考えられます。

 

しかし、マンションの管理組合は必ずしも経済合理性では動きません。マンションは営利組織ではなく、コミュニティーだからです。各戸の権利も平等です。

 

コミュニティーであるからこそ、個人の立場を超えたマンション全体の視点で忌憚なく意見交換をすべきなのですが、その難しさを感じました。

 

経済合理性に慣れ親しんでしまった私たちは、本当の意味で「公共」を理解できるのでしょうか?

 

「人間の集団」を、(経済以外の)何らかの価値を共有する「社会」あるいは「コミュニティー」に作りかえることはできるのでしょうか?

 

ある共通の価値に従って、自分が多少の損を引き受け、他者や全体の得を目指す、そういう思考でみんなが合意するためには、どうしたらいいのでしょう?

 

 

「奪いあい」から「分かちあい」へのモードチェンジは、思った以上に難しいのだなあと実感しました。しかし、ますます成熟社会になっていくわけですから、「分かちあい」の重要性は増すばかりです。

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このページは、ブログ管理者が2016年3月 3日 16:16に書いたブログ記事です。

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