「戦争論」で有名なクラウゼビッツは、圧倒的物量によって正面撃破する合理的戦略で有名ですが、実は軍隊を率いる将の精神力を第一に重視しています。精神力はスポーツの世界でも常に強調されますが、素人が思う以上にやはり大きな影響を及ぼすのでしょう。昨日のスポーツニュースを観てあらためて感じました。
大相撲では、白鵬関が平幕の豊ノ島関との優勝決定戦に勝って優勝しまし

たが、やはり何といっても二日目の連勝ストップが最大の話題でした。九州場所前に、大分の双葉山の生家を訪れたことが大きく報道されました。尊敬する双葉山の故郷に近い今場所で、連勝記録を破ることを意識しての訪問だったのでしょう。しかし、どうもNHKに協力したという雰囲気を感じていました。連勝達成した直後の特別番組での絵柄としては申し分ないものでしょう。名古屋場所でNHK放送が中止されたのも影響したのかもしれません。ちょっと、いやな予感がしました。
しかし、連敗せず優勝したのは素晴らしい精神力です。優勝後のNHKニュース番組でこう語ったのが印象的でした。
「今年はいろいろあって、横綱として最後を締めてやるという気でした。しかし、一人横綱の重圧は予想以上だった。大関の時は横綱になっても大して変わらないと思っていたが大違い。また、朝青龍関がいるときは、一人横綱が大変とは全く思わなかった。しかし、朝関が引退して最初の場所の初日、全くそれまでとは違っていた」
横綱はスポーツ競技のチャンピオンとは違い、責任を伴うものとはよく言われます。だからこそ、ここまで重圧を感じるのでしょう。また、こうも言っていました。
「正直、この苦しみを分かちあえる新横綱の誕生を待ち望んでいます。でも、そういうものが出てきたら、絶対上げさせないように勝負にいきます」
一見矛盾したこの言葉に、横綱の苦しみとプライドを強く感じました。
今回も63連勝も、ライバル朝青龍関がいなくなったからできたとの見方もあるでしょう。しかし、真実はその反対だったと思います。「朝青龍関がいなくなったのにも関わらず」の連勝は讃えられてしかるべきです。優勝インタビューで、対戦した豊ノ島関をたたえていたのも印象的でした。重圧とそれを乗り越える精神力にこそ偉大な人間の力を感じさせ、観る人を感動させるのです。
いっぽう、もう一人のチャンピオン、浅田真央選手は昨日も大不調でした。練習で出来ることが試合でできない。技術よりも精神力なのでしょう

が、ここまで影響が大きいとは・・・。いっそのこと試合に出なければとも思うのですが、試合で今の苦労を味わい克服しなければ、復活できないものだと考えられているのでしょう。トリノオリンピックの頃の安藤美姫選手も同じような状態でした。これを乗り越えてこそ、正真正銘のチャンピオンになれるのです。痛々しいですが、復活を心から祈りたいと思います。