7月に90歳で亡くなった梅棹忠夫さんの実質的最後の著書「梅棹忠夫 語る」(日経プレミアシリーズ)を、感慨を持って読みました。
小山 修三

そこでいいリーダーの条件を問われ、
「フォロワーシップを経験し理解することやろな」と答えています。
彼がそう思うに至ったのは、山岳部での経験によるものです。
「計画を立てた人がリーダー、それに合意してフォロワーとなる。フォロワーシップとは盲従ではない。自分の意志や判断は持つけれども、隊長には従う。山には危険がいっぱい、時には命にかかわることもあるからな」
旧制三高山岳部で今西錦司さんをリーダーに招きます。そして、今西さんに多くを学んだそうです。しかし、こう言います。
「今西さんに育成されたのではなく、推戴したのや。弟子ではなく契約、ゲマインシャフトではなく、ゲゼルシャフト集団です」
旧制三高では、新入生からいきなり、先輩にいっさい敬語を使ってはいけない、「さん」づけもダメ。全部呼び捨てにしていたそうです。敬語が暗に示す上下関係はゲマインシャフトの象徴であり、それでは山での冒険を生き延びることができないとの判断なのでしょうか。強烈な目的志向です。
翻って企業でも、危機が突然おとずれる可能性が著しく高まっています。村落共同体的組織では、生存が危うくなりつつあります。そういう状況のもとでは、リーダーの力量が重要になってきており、優れたリーダーを輩出するにはどうしたらいいかが、最重要の経営課題になっています。
リーダーシップ教育があちらこちらで叫ばれていますが、その前にフォロワーシップ教育が必要なのではないでしょうか。梅棹さんが言うように、フォロワーシップの理解や経験がないまま優れたリーダーになれるとは思いえません。リーダーも常にフォロワーでもあるわけですし。盲従ではない、ゲゼルシャフト集団におけるフォロワー教育こそが現在求められているのではないでしょうか。
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