ケース・メソッドの可能性

先週の水曜の夜、六本木アカデミーヒルズでの 「アダットシリーズ ケースで学ぶグローバル戦略」が無事開催できました。今回は、定員30名のところ満席でした。講師の青野仲達さんのリードも的確で、満足度も高かったと思います。

 

使用したケースは「イングヴァル・カムプラッドとイケア」という、HBS開発のケースです。イケアは、日本市場にも数年前に参入し着実に店舗を増やしています。ほとんどの受講者がイケアの店舗に行ったことがあるとのことで、身近なケースでもあったようです。

 

このケースは、イングヴァル・カムプラッドが1943年に17歳でスウェーデンの田舎で小売を始めたところから始まります。そして戦後すぐ家具販売に眼をつけ、成長を続けるストーリーです。このケースは、いくつかのテーマで議論ができます。

     (戦後の)環境変化からいかに機会を見つけるか

     既得権益集団の妨害にどう対処するか

     いかにブルーオーシャンを見つけ、成功させるか

     創業者の理念や価値観を拡大する組織にいかに浸透させるか

     拡大する組織をいかに運営するか

     文化の異なる海外事業に、企業文化を持ち込んでいいものか

     創業者がいなくなった後、どうすべきか

 

など、どれも身につまされるような経営課題が、豊富にケースから読み取れます。従って、受講者の発言も活発で、たった一回のケース・ディスカッションでも、ここまで中味の濃い討議が出来ることを証明してくれました。最後の質疑で、「ハーバードでの議論と比べて、今日の議論のレベルはどうでしたか?」との質問に、青野講師はほとんど遜色ないと答えました。そうだと私も思います。

 

これまでケース・メソッドは、「何十ケースとやって初めて効果が出る」「日本人は、自発的に発言しないので難しい」「見ず知らずの人とすぐには突っ込んだ議論はできない」など、日本での普及は難しいとの前提があったように思います。もちろん、アメリカと比べればそういう面も確かにあると思いますが、日本人の気質も変わってきていますし、また苦手だからこそやるべきとの考え方もあってしかるべきだと思います。

 

サンデル教授の『白熱教室』の人気により、ディスカッション型のクラスへの関心が日本でも高まっています。ケースという膨大な教材をもっともっと活用して、主体的に知的レベルを上げる能力開発を盛んにしていきたいと、あらためて思いました。

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このページは、福澤が2010年11月22日 14:26に書いたブログ記事です。

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