先ほどNHKでワタミの渡邉美樹会長が中学生と対話する番組 「シリーズ 未来をつくる君たちへ」をやっていました。
「21世紀の君たちへ」という司馬遼太郎の著書をモチーフにしたものです。
司馬の「竜馬がいく」の愛読者である渡邉会長が、龍馬の実家の近くにある高知市立城西中学校の生徒15人くらいと、龍馬ゆかりの場所を訪ねて対話していきます。
まず、1年から3年まで混じった15人というのがいいです。この手の番組では、得てしてあるクラスを対象にすることが多い中で、この編成は密な対話を促すには最適に感じました。渡邉氏がどの生徒とも君付けで呼び合える関係ができていました。
さて、まず渡邉氏は、こう持論を述べます。
「龍馬は他人のために頑張ってきたのではなく、自分がやりたいことをやり続けたに過ぎない。最近そう感じるようになってきた」
暗に、自分もそうだった。生徒たちも、自分が好きなことを見つけてそれに打ち込むべきだとの、メッセージが予感されます。
それに対して、すかさずある女生徒が反論しました。
「父は、自分のためでなく他人のために生きなさいといつも言っています。そういう助け合う社会ではないでんでしょうか?」
渡邉氏は他の生徒に振ります。すると、その男子生徒もいいます。
「僕も、人のために生きるべきだと思います。そのほうがいい社会だと思います」
渡邉氏は一瞬、本気になったように見えました。
「僕が中学校の時には、いっさいそんなことは考えなかった。そうか?みんな自分のことが一番じゃないのか?」
主客逆転といったところです。しかし、その後の渡邉氏はさすがでした。
スタッフにグラスと水を持ってこさせ、グラスに水をいっぱいまで注ぎ、言います。
「グラスは一人ひとりだ。水はお金とか地位とか名誉、なんでもいい、欲しいものだ。グラスがいっぱいになっても、グラスを大きくすればまだ水は入れられる。大きくしなければ、こぼれ落ちる。こぼれ落ちた水をまた別のグラスに集めればみんなに水がいきわたる。会社も社長が独り占めしたら社員は辞めていき、結局社長も何も得られなくなる。みんなのためにするということは、まず自分のグラスを満たして、それを独り占めせず他の人にも水が回るようにすることだ」
ここに渡邉氏の哲学を見たような気がしました。中国の「まず豊かになれるものから先に豊かになれ」という近代化論を思い起こさせました。
「人間は平等ではない。走るのが速い子も遅い子もいる。でも、悲観することはない。夢を達成するのが幸福ではない。夢を追い求めることが幸福なんだ」
とも言いました。
生徒たちがこのような言葉に納得したかどうかはわかりません。でも、自らの体験に基づいて熱く語る渡邉氏の言葉に、何かを記憶に残すことには成功したのではないでしょうか。
渡邉氏は終始対話を通じて、龍馬が遠くの海を見て夢を抱いたように自分が本当に好きなことを見つけて、それに向けて頑張り続ければいいことを強調しました。
最後に、スタッフが最初に質問した女生徒に、対話を通じて何を学んだか尋ねたところ、こう応えました。
「自分の夢を追い求めれば、それが他の人のためにもなるということがわかりました」
さすがに渡邉氏は大した先生だと感心しました。
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