グループ企業間の連携を促すために

 

近年、持株会社化する企業が増えています。それまでは、主となる企業の下に多くの子会社がぶら下がっているのが普通でした。それを持株会社の下に、コア事業を担う会社とノンコア事業を担う会社群を並列にぶら下げる形態への移行が、持株会社化です。

 

持株会社化するメリットは、グループの経営資源を機動的に有効活用できることでしょう。そして、さらにはシナジー効果を発揮させることも期待されます。

 

不確実性の高まる経営環境のもとで、コア事業の成熟はどんどん進み、それを変革するために、グループ内にある子会社が持つ経営資源を活用する必要性が高まっているのでしょう。

 

しかし、企業とはいったん親子関係にあると、どうしても上下関係となってしまい、相互の学習は難しいものです。それは、持株会社の下で並列関係だと定義したところで、そう簡単に変わるものではありません。つまり、箱(ハード)は変えてもそれだけでは意識(ソフト)は変わらないという、いつものパターンです。そこで、組織開発への期待が高まります。


先日、昨年持株会社化したある企業グループで、グループ連携を主目的にしたワークショップを行いました。

 

実は昨年までは、コアを担う親会社(以下C社と呼ぶ)の部長を対象に、その企業グループの将来を考えてもらうワークショップを実施していたのですが、昨年持株会社化したことをきっかけに、今年は思いきって受講者をC社以外のノンコア事業を担う会社群(以下N社と呼ぶ)からも集めることにしたのです。

 

メンバーは部長クラス20人で、C社からは4人、残り16人はN社群(7社)からです。シャッフルした4チーム(5人/チーム)それぞれに、後で述べる課題についてアウトプットを作ってもらいます。

 

規模も社会での認知度も社員の学歴もC社とN社群では、圧倒的に差があります。それらをミックスしてうまくいくのか不安でした。C社メンバーが主導してしまい、N社メンバーは議論に加わることができないのではないか?C社メンバーは、N社メンバーや事業内容に関心を持ってくれるだろうか?

 

課題は二つ。

1)このままでいったら10年後の当企業グループはどうなるか?

自分たちは、10年後にどんな企業グループにしたいか?

2)それを実現するために、X社の持つ経営資源をどうグループ全体で活用していくことができるか?

 

X社には、チームごとにそれぞれ別のN社がアサインされています。各チームには最低一人は、アサインされた当該企業からのメンバーが入っています。その方の情報や問題意識をベースに、他の企業のメンバーとともに智恵を出していくわけです。


ポイントは、X社をどうするかではなく、X社が持つ経営資源をどう活用して、当企業グループを成長させるかです。つまり、X社はグループにとって宝の山になりうる、しなければならないという意識を皆に持ってもらいたいのです。

 

皆もともとC社のことはよく知っているのですが、他社のことはほとんど知りません。そのため、最初に長めの自己紹介をしてもらいました。これまでの仕事内容、現在の仕事内容、現在の組織と自己の課題の3点を発表してもらったのです。これで、俄然他社の事業内容やメンバーに対して興味が湧いたようです。当初の心配は杞憂でした。


チーム内での討議も、C社メンバーに引っ張られることもなく、皆が積極的に発言していました。この点も杞憂でした。素人だから見えることも多く、斬新な意見が多数出てきました。素朴な質問というのは、いつもパワフルで鋭いものです。

 

これまでは、グループ企業社員同士が対等に議論する機会がなかったため連携もうまく図れていないようでしたが、今回のワークショップのように意図的にその場を作ることで、十分グループ連携が図れるのではという自信のようなものが芽生えました。

 

今回のワークショップは、いわばキックオフで、これから各チームが自主的に活動し、4月にその成果を社長に発表することになっています。アウトプットの質も重要ですが、それ以上にグループ企業間の連携が促されるような組織風土を醸成することを社長は期待しています。

 

組織を開発するきっかけに携わることができて、私自身刺激的で楽しかったです。この後の展開もすごく楽しみです。

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このページは、福澤が2015年2月16日 18:51に書いたブログ記事です。

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