不況時の社会人自己学習

先日「不況時の研修」 という記事を書きました。

 

不況時には、残念ながら多くの企業は、研修費用を削減します。そのような状況下、社員それぞれは、自己学習へどのような対応をするのでしょうか。各方面の方々から伺った話を総合し、不況時の社会人自己学習について、あくまで仮説を書きたいと思います。

 

企業や業種による差は大きいとはいえ、それ以上に差が大きいのは世代でしょう。非常に大ざっぱですが、管理職前後とそれ以前(仮に、若手と呼ぶ)で、区別されます。

 

若手は、企業に頼らないで生きていけるように、目に見えやすい(わかりやすい)スキルと資格の獲得を目指します。アカデミーヒルズのライブラリーの稼働率は、昨年秋以降、急に高まっているそうです。また、資格系社会人学校の学生数も大きな伸びを示しています。「勉強法」系の書籍も相変わらず好調です。

 

この層は、資格に代表されるように、第三者が見て分かりやすいスキルの獲得を目指すようです。ビジネススキルにしても、ベーシックな会計、マーケティング、論理思考といった知識やスキルです。この層のうち、ビジネススクールなどの(時間も含む)投資費用の大きい学習に、どれだけ振りむけるかは不明です。一般に、好況期のほうが、自発的転職が増える傾向にあることから、不況期には投資リスクを取らなくなることは予想されますが。

 

一方の、管理職前後の層です。好況期には忙しくて、自己啓発の時間が取れなかった人が、残業が減ったことにより学習時間を確保できるようになるとも考えられます。しかし、組織の中核にある彼らは、リストラの影響でかえって仕事が増えてしまうこともあるようです。

 

若手のように、スキルアップして転職をという夢を描きづらくもなっています。日本全体が不景気なら、どこへ行ってもそうは変わらない。だとしたら、これまで培ってきた経験が活きる、今の会社で何とか頑張ろうと、考えがちです。

 

そう覚悟を決めたものの、では会社を盛り立てるべく、自己のスキルを高めるために投資をするか、というとそうでもなさそうです。ただでさえ、可処分所得は独身若手より少ないところにもってきて、給与の削減幅も若手より大きい。給与は減るが、仕事は減らない。でも、責任は大きくなる。

 

給与とポジションが上がることが予測できる好況期であれば、特定専門スキルを向上させるための投資も厭わなかった中堅社員も、不況期には不安が先に立ち、投資に慎重になってしまいます。

 

 

以上、仮説ベースで書いてみました。結論としては、こんな時こそ企業が、会社の中核を担う管理職前後の人材開発投資に、力を入れるべきだと考えます。そうでないと、多くの日本企業の屋台骨が揺らいでしまのではと危惧します。

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このページは、福澤が2009年3月 4日 18:20に書いたブログ記事です。

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