不況時の研修

今朝の日経新聞にこんな小さな記事がありました。

 

「機械商社の日伝は2009年度から、新入社員の研修期間を従来の倍の五カ月に延ばす。景気後退による仕事量の減少を逆手に取り、講師役も外部の専門家から社員に切り替える。(以下略)」(日本経済新聞 09/2/16朝刊)

 

景気が悪くなると、利益をすぐに生まない研修費用は真っ先にカットされるというのが、これまでの常識でした。しかし、今回はそれとは少し異なる対応を取る企業が増えているように感じます。

 

先日も、あるSIベンダーの社長からこんなことを伺いました。

「昨年夏までは、人手不足で満足な教育もできなかった。それが一転、急に受注が激減した。契約終了で、SEが続々と現場を離れてきている。こんな時こそ、これまで手が回らなかった教育に力を入れる。もちろん、直近は苦しいが、いずれ景気が回復した時に、今の教育が必ず生きてくるはずだ」

 

仕事がないのだから社員を減らすべきと考えるのが、株主重視の経営かもしれません。しかし、人材を資本と考える企業では、投資の好機と捉えます。それは、評価期間を、四半期とみるか5年以上と見るかで異なるとも言えるでしょう。

 

さらに、講師役も外部から内部へ切り替える動きが出てきています。それは、コスト削減効果だけではなく、教える側の社員の人材開発も期待しています。「教えること」以上に、効果的な学習方法はないからです。

 

また、研修という場を通じて、若手(受講者)と中堅(講師)との間のインタラクションが発生します。研修という場で講師を経験した中堅社員は、現場でのOJTのコツもつかむことでしょう。

 

研修で扱う内容も、どの会社にも通用する一般的なものから、自社にカスタマイズしたものにシフトしていくでしょう。そこでは、仮に講師が外部であったとしても、研修に関わる社員のコミットは深くなります。

 

つまり、この不況を利用して、組織内にインタラクションを巻き起こし、学習する癖を植え付けようという動きなのです。

 

こういった組織内ラーニングの設計を「狙って」実行できる企業は、必ずや景気回復局面で大きく飛躍することでしょう。

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このページは、福澤が2009年2月16日 16:18に書いたブログ記事です。

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