エコシステムとIgnition point(発火点)

現在のグローバル不況が去った後、これまでの企業とは、全く異なる戦略で市場を席巻する企業群が現れる気がします。

 

戦略にもいろいろな定義がありますが、私が最もピンとくるのは、「自社が、安定的に高い収益性を実現できるような、均衡状態を構築すること」という定義です。

 

「新規参入があることにより、市場の収益性は限りなくゼロに近い水準で均衡する」というのが経済学の教えです。この自然的原理を打ち破るだけの環境を創りだすことが戦略です。もちろん、談合や規制、保護などはなしで、です。

 

これは、いま風に言えば、「自社に有利なエコシステム(生態系)を構築する」ということでしょう。関わるステークホルダーにとって快適なエコシステムを構想すること自体、大変なことですが、それを実現するのはもっと難しいことです。

 

実現するためには、Ignition point(発火点)を見つけることが肝心です。これは、ベタープレイスジャパンの藤井社長からうかがいましたが、その例で示しましょう。

 

同社は、電気自動車を普及させるためのプラットフォームを提供することを目指しています。普及のネックは、バッテリー価格です。そこで、バッテリーを自動車メーカーに無料提供し、充電施設(ガソリンスタンドの電気版のようなもの)を展開、そこでの充電量に応じて利用者から電気自動車2.jpg対価を受け取るというビジネスです。

 

 

 

もう一つネックは、ユーザーの安全性への不安です。技術的には問題ないのですが、初期の個人ユーザーは、高速道路の真ん中で火を噴いたりしないだろうか、と心配してしまうかもしれません。その結果、エコシステムは出来ても、肝心の一般個人ユーザーが電気自動車の購買に踏み切れない可能性があるのです。

 

そこで、普及のためのIgnition pointが必要になります。それが、東京のタクシーだそうです。東京のタクシーは、比較的組織化されています。タクシー会社に働きかけ、電気自動車を導入してもらいます。それだけでも相当な台数です。

 

さらに、電気自動車タクシーに乗った乗客は、その乗り心地の良さを体感できます。また、耐久性を要求されるタクシーが電気化されていることを知れば、電気自動車の耐久性に安心感を持ってもらえることでしょう。

 

このように、都内のタクシーをIgnition pointにして、市場を拡大させることを狙うそうです。

 

 

どこをIgnition pointにして、どんなエコシステムで市場を制覇する企業が現れるのか。この不況期に準備は着々と進んでいることでしょう。

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このページは、福澤が2009年3月 5日 21:37に書いたブログ記事です。

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