1)これからの時代に競争力がある組織とは、どのような組織なのか、
2)そのような組織はどのような仕掛けがあれば構築できるのか、
3)そのような組織はどのような個人によって成り立っているのか、
4)そのような個人はどうすればできあがるのか、
あるいは、何がそのような個人が出来上がるのを阻害しているのか
どうすれば、その阻害要因を取り除けるのか
国家も企業も、基本的にはこれらの問いに真摯に取り組んできたものが生き残っているのだと思います。
たとえば、明治維新以降の日本。
1)これからの日本は、中央集権の下で経済力と軍事力を兼ね備えなければ他国の侵略にさらされてしまう。
2)そのような国にするために、「富国強兵」を目指し、廃藩置県、徴兵制、金本位制、強固な官僚機構、学校制度など、様々な制度を構築していった。
3)国民は、国家の指導のもと一糸乱れぬ統一行動がとれるように、目上の者を敬う道徳、自己犠牲、協調性、忍耐力などを期待された。
4)そのような国民をつくるため、儒教倫理に基づく道徳の啓蒙、適切な知識の記憶を目的とする学校教育、隣組などの連帯責任と相互監視のネットワーク、
それらの阻害要因とは、国家などの組織よりも個人を重視し、多様性を重視する考え方だった。
それらを取り除くために思想教育、思想犯への刑罰、村八分、空気による支配を強化していった。
たとえば、戦後高度成長期の日本企業。
1)企業が生き残っていくためには、他社よりも少しでも生産量が多く、生産性も高くなければならない。
2)そのような企業となるために、経営資源を集中的に集める仕組み(一部の大企業への傾斜配分)や、経営陣と社員が(対立ではなく)一体となる仕組みが必要だった。
3)そんな企業では、生活のほとんどすべてを企業グループ内で完結でき、他の世界を知る必要もなく、会社への依存心(忠誠心)の高い社員によって構成されていた。
4)そのために、企業は社員に年功序列と終身雇用を保障し、長期的な安心を提供した。社員もそれを受け入れ、滅私奉公を是とした。
阻害要因があるとすれば、異なる価値観やシステムで日本企業を攻め立てる外資系企業との競争だった。
政府の手厚い保護のもとで、競争はかなり回避された。
そして、オイルショック後の低成長時代の日本企業。
1)限られた資源を有効に活用する、効率経営ができなければ生き残れない。
2)カイゼンに代表される、社員一体となって工夫を継続する仕掛けが必要になった。
3)与えられた役割やルールの下で、向上心を持って集団として業務を遂行する人材が必要だった。
4)できるだけ小集団に業務を切り分け、それぞれにリーダーとなる管理者を配置し、管理者育成に取り組んだ。
阻害要因があるとすれば、管理者教育がうまくなされず、管理者が不足することだった。
そうならないよう、管理者に対して重点的に教育投資がなされた。
いよいよ、現在の日本企業。
1)あらゆる国内市場は成熟し、アジアを中心とした海外市場に打ってでるか、国内では全く新しいビジネスモデルを開発しなければ生き残っていけない。つまり、既存のやり方を否定し創造できる組織とならなければならない。
2)そのためには、継続より創造やリスクを取ることが評価されるように、あらゆる制度を変えていかなければならない。
3)そういった企業では、経営陣や社員ひとりひとりがこれまでの思考枠組みを見直し、自分と異なる他者から学ぶ能力を身に着けていなければならない。
4)そうした社員をつくりだすためには、多様な人材を意図的に増やすとともに、経営者自らが社員の教育に最大限の時間と意識を投入すべきだ。そして、社員に求める行動を、自ら行動で示す。
仮に社長がそう行動したとして、大きな阻害要因になるのは各部門の(という城を持つ)管理職層である。
阻害要因を取り除くには、城と特定管理職のつながりを断つこと、つまり異動だ。その上で管理職に対して、業績以上に社員に対する育成責任を強調することだ。
コメントする