組織能力構築とは、集団に対してはたらきかけ、新たな知識やスキルを獲得していくことと定義しました。では、どのようにそれを実現するのか。
三つの方法があります。
1)業務のルーティーンに学習機能を埋め込むことによって
2)社外の組織とのかかわりによって
3)社内の他組織とのかかわりによって
まず1)から説明しましょう。通常、業務のルーティーンワークは、普通退屈な単純作業の繰り返しだと思われがちです。しかし、組織能力の高い企業では、ルーティーンそのものに学習機能が埋め込まれています。普通に仕事することそのものが組織としての学習であり、組織能力構築がなされるのです。その代表選手は、セブンイレブンジャパンです。機会損失の最小化という「駆動目標」に向けて、各店舗のアルバイトを中心に仮説検証を繰り返すことが、仕事そのものになっています。セブンの店舗で三か月バイトすると世界経済を語るようになる、という話があるくらいで、組織の能力が日々高まっているのです。
また、もう一つの代表選手はトヨタです。トヨタ・ビジネス・プラクティス(TBP)とよばれる「仕事の進め方」を、全従業員が叩き込まれるそうです。張前会長は、「TBPはトヨタ社員全員のための標準語であり共通語だ」と語っています。TBPの詳細はここでは書きませんが、問題解決の8ステップであり、個人の問題解決活動を組織の記憶として定着させ、それを他部門にも展開していく活動です。それが、日常業務に完全に組み込まれているのです。
2)はルーティーンではありませんが、否応なく他社と仕事をすることで組織能力が構築される活動です。先のトヨタの例でいえば、取引先はトヨタと取引することで組織能力が磨かれます。私も、少ないトヨタとの取引経験を通じて実感しています。また、他社との共同事業、資本提携、合併などの公式なインタラクションを通じても、学ぶことは非常に多いのです。他企業から学ぶために、そういった施策を取ることもあります。
他企業以外にも、外部の専門家とのかかわりを通じて組織能力を高めることも、もちろんあります。ある組織が雇うアドバイザーは、その典型です。一般にコンサルタントは依頼を受けた問題を解決しますが、アドバイザーは当該組織が自ら問題解決をする活動を外部から支援します。正直にいえば、コンサルタントは組織能力構築にはあまり役立ちません。一方、アドバイザー(プロセス・コンサルタントも含みます)の役割の多くは組織能力構築だと考えるべきでしょう。(実際そのあたりの役割定義は曖昧に捉えられているようです)
もう一つは、研修講師という専門家とのかかわりです。優れた講師は、当該組織へ有益な知的刺激を与えることに長けています。そういった講師の能力を引き出すような研修の設計をすべきです。
最後の3)は、社内の他組織とのかかわりです。これは非常に効果が出やすく、かつ比較的容易に取り組むことができます。CFTのような部門横断プロジェクトが有名ですが、研修をそのような目的で使うこともできます。部門横断プロジェクトは、その実施に対するハードルが高いのがネックになりがちです。オフィシャルにそれを実行するには、トップの強いリーダーシップが求められるからです。その点、研修は部門トップの協力も得やすく、ハードルが低いのです。研修をそういった目的で戦略的に仕掛ける企業も増えてきています。次回はその事例を書いてみようかと思います。
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