ヨーロッパで考えたこと

9/1927の間、久しぶりにヨーロッパに行ってきました。出発する日は猛暑で汗をかきながら家を出たのに、帰国した日はもうすっかり秋の涼しさとなっていました。この間、大きな台風を東京が直撃し大変なことになっていたようですが、海外でもTVニュースで大きく取りあげていました。トーンとしては「踏んだり蹴ったりの日本」でしょうか。

 

今回は、ドイツのハンブルグ、ドレスデン、チェコのプラハ、そしてイタリアのベニスというルートでした。ハンブルグは一泊、その他は二泊と駆け足で、やっとトラムやバスの乗り方を把握したと思ったら移動で、それぞれもう二泊はしたかったという気がしました。

 

プラハとベニスは世界中から観光客が集まる街です。25年前にもベニスを訪れましたが、その時と比べて街はほとんど変わっていないのですが、観光客の顔ぶれが全く変わっていると感じました。25年前のベニスを訪れるのは、ほとんどがヨーロッパ系の人々だったと思います。そこにアメリカ人や私のような日本人の学生(卒業旅行)がちらほらいると感じでした。

サンマルコ広場.jpg

ところが、今回、プラハもそうでしたが、ベニスのサンマルコ広場周辺行くと文字どおり世界中から人々が集まっていることを肌で感じました。中国、ロシア、ブラジル、インド、そうまさにBRICSです。ベールを被ったアラブの人も何度もみかけました。彼らの多くは団体旅行で、集団で移動しますので、いやがおうにも目立ちます。世界の縮図がそこにあるようでした。

 

この四半世紀で世界全体に豊かさが広がったことを実感すると同時に、この先どうなるのだろうと、ちょっと不安になりました。地球が果たしてそれに耐えられるのだろうかと。

 

今回ベニスを訪れた目的は、現在開催されているベネチア・ビエンナーレです。ベネチア・ビエンナーレとは、二年に一回開催される現代美術の祭典です。今回は第54回、つまり100年以上続いている世界最古にして最高の現代美術イベントなのです。

アメリカ館.jpg

 

そこでは、ベニスの違った顔が見られました。会場は主に島の東側にあり、そこを訪れるのはビエンナーレ目的の人だけで、サンマルコ広場にたくさんいた世界中からの観光客はいません。世界で最も美しい街に来ているのに、わけのわからない現代美術作品をみるのに時間を使おうという酔狂な人は、そう多くはありません。したがって、同じベニスとはいえ、全く異なる人々が集まってくるのです。

 

そこで団体といえば、イタリア国内の学校の遠足(社会見学)くらいのもの。その他は現代美術が好きな個人たちです。美術が目的なので、落ち着いた雰囲気で多くの会場をじっくり周っています。いかにもイタリアの上流階級といった感じのマダム達も数多くいます。リゾート地に来て、今日はアートにでも接してみようかといった風情。ファッションといい振る舞いといい、日本ではなかなかお目にかかれません。さりげない華美さというか、生まれた時からの品の良さみたいなものが自然ににじみ出てくる感じです。成り金ではなく、長い時間をかけて作り上げられた風格とでもいいましょうか。もちろん女性だけでなく男性も。(私には無縁の)有名なイタリアブランドの服やバッグも、こういう人が身につけるために存在するのだと、よく理解できました。


その時ふと思いました。現代の日本にはこういう光景はなさそうだ、もしあったとすれば江戸時代の御花見や紅葉狩りか。浮世絵には、そういう風情のある光景がたくさん描かれています。

 

日本人は戦後アメリカを追いかけ、成り金を目指してきたように感じます。そうして、古い日本を忌み嫌いどんどん捨ててきた。しかし、イタリアではそうではなかったようです。古いイタリアを、プライドを持って維持してきた層が確実にいるのです。日本もイタリアに負けないほどの伝統と歴史、そして独自のスタイルを持っていました。それなのに、そのほとんどを捨ててしまった。我々は大きな勘違いをしてきたと、早く気づくべきです。

 

そして、そんな日本の失敗を新興国の人々が繰り返さないことを、祈らずにはいられません。

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このページは、福澤が2011年10月 3日 14:38に書いたブログ記事です。

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