追悼 スティーブ・ジョブズ

5日、スティーブ・ジョブズは亡くなりました。彼はかつて、「マッキントッシュというPCはどういう特徴か?」と記者に質問され、「マッキントッシュはマキントッシュだ!」と回答したそうですが、「スティーブ・ジョブズはスティーブ・ジョブズだ!」と世界中に知らしめてこの世を去っていきました。昨日依頼、世界中で多くの人々が彼について語り書いています。ビジネス界においてこんな存在は、後にも先にも彼だけでしょう。私も少しだけ語ってみます。

 

私が初めてPCを買ったのは1988年、NEC製でした。本当はビジネススクールの同級生が持っていたマックが欲しかったのですが高くて買えず、タテ型で形が少しだけマックに似ていたNEC製のあるPCを仕方なく買ったのでした。しかし、その時既にジョブスはアップルを追われていました。もう私にとって伝説の人でした。

 

そして卒業後、コンサルファームに入社した1990年、「マッキントッシュSE/30」を晴れて購入、愛用しました。その躯体もキーボードもShape

se30.jpg

美しく、うっとりしたほどです。3年でコンサルファームを辞め、SE/30とともにベンチャー立ち上げに加わりました。当時5人しか社員はいませんでしたが、社内のPCはマックで統一しました。今思えばただでさえおカネがないのに、値段の張るマックで統一したのは、こだわりと愛着以外の何ものでもありません。自宅にも「Macintosh Performa 588」を買いました。90年代半ば、自宅からオフィスのサーバーにリモートアクセスできたのは、画期的だったのではないでしょうか。しかし、その頃のマックには以前のような愛着は持てなかったように思います。


そうして、その後のウィンドウズの攻勢にはあらがえず、あるとき一斉にウィンドウズに切り替えたのです。あの時の残念さは今でも忘れません。初恋の人が落ちぶれて行く姿をみるのに我慢できなくなりその街を離れた、そんな感じでした。ジョブもアップルを追い出され、NeXT、そしてピクサーとさまよっているようで、アップルとともに、ジョブズもこのまま消えていくのか・・。ソニーがアップルを買収するのでは、との報道もありました。

 

その後、しばらくアップルとジョブズのことは忘れていたのですが、97年なんとジョブズが暫定CEOとしてアップルに復帰、たまげました!その後の、iMac,iPod,iPhone,iPadの大攻勢には目を見張りました。でも、個人的に買ったのはiPodだけ、一度離れた後ろめたさなのか、手を伸ばせないでいるのです。でも、ジョブズへの興味はどんどん増していきました。スタンフォード大学卒業式のスピーチには痺れました。そして、どうしてジョブズのような人間が出来上がったのかに興味がわきました。


たまたま昨年、友人が経営する会社の若手研修を個人的に頼まれ、ジョブズの半生(ほとんど全人生となってしまいましたが)をケースとしてディスカッションしました。その際、資料を集めて彼のケースを作成しました。それは、楽しくかつ興味深い作業でした。昨日今日の報道は、まるで彼を神様のように扱っています(ますますそうなるでしょう)が、陽の部分と同じくらいの影の部分を持っています。例えば倒産しかかったアップルに立て直しのため招かれたのではなく、かなりあくどいこともして強引に復帰したのです。

 

でも、(近くからでなく)遠くからひいてみれば、言うまでもありませんがやはり彼は偉大な人でした。若くして優れたビジョンを持っていたようにいわれますが、私はそうは思いません。ただ、瞬間瞬間の直感が異常に冴えていた。それは彼が信奉していた禅にも関係あるかもしれません。それに加え、直感を信じ執着する人並み外れた強い自負心を持っていた。直感も自負心も、その最大の敵は「常識」です。徹底的に常識を嫌ったのだと思います。それが「stay hungry stay foolish」の意味でしょう。

 

彼のような個性が、結果として世界一の企業をつくり上げた、この事実は非常に重いですし、忘れてはならないと思います。アップルのジョブズではなく、ジョブズはジョブズなのです。

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このページは、福澤が2011年10月 7日 17:31に書いたブログ記事です。

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