知能と問題解決:「知性誕生」を読んで

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知識(Knowledge)、知恵(Wisdom)、知能(Intelligence)これらは似て非なるものですが、なかなかそれらの関係性を整理した書物にあったことはありませんでした。今回、「知性誕生」(ジョン・ダンカン著)を読んで、少しすっきりしました。(タイトルは「知性」ですが「知能」のほうが適切です)

 

「あの人は頭がいい」というときの「頭がいい」に相当するのが知能です。記憶力がいいのでもなく、ずる賢いのでもなく、「知的」に優れていることです。そういう人は問題解決能力が高いといえます。IQで測れそうですが、実は測れないことが本書で示されます。

 

では、どういう人が問題を解決できるのでしょうか?ダンカンはこういいます。

 

行動を能動的に支配する。そして、問題を分解して、注意を必要とする部分に集中し、その部分を実現させることができる

 

問題はいくつかの固まり、すなわちステップに分解しなければ解決できません。その上で、それぞれの固まりに集中して考えるのです。ここまでは知能のはたらきです。

 

それぞれの固まりごとに、多くの解が考えられるでしょう。できるだけ多くの可能性ある解を思いつくことが必要です。そして、その中からもっとも適切な解を選択する。そこで役立つのが「知識」です。

 

知識とは、本質的に世界がどうなっていて、どのように機能しているかを表している。ある行動が構築されるとき、各段階の正しい行動を選択し、組み立てるためにこういった知識が用いられるに違いない。

 

問題解決の秘訣は、適切な知識を見つけること、つまり、問題をまさに適切な副問題に分割し、解決への適切な経路を進むことだ。

 

そして、有用な知識は抽象概念です。抽象概念とは、「多くの個々の事例すべてに当てはまるもの」です。問題解決のある部分でこれを使うのです。

 

問題を解くときに使える知識が増えることは好ましいことです。しかし、単なる事実や情報としての知識では使い物になりません。生きた知識でなければ。それは知能のはたらきの結果であり、「自分自身の思考の産物、つまり自分自身の世界との相互作用の産物」です。そういう構造化された知識を蓄積するには多くの「経験」が必要です。年輪と経験を重ねて蓄積された知識の集積が「知恵」なのです。

 

 

今までもやもやしていたことに、ひとつの観方をもらった快さを感じました。また他にもいろいろと刺さったことがありました。知的刺激とはこういうものなのでしょう。

知性誕生―石器から宇宙船までを生み出した驚異のシステムの起源
ジョン・ダンカン John Duncan 田淵 健太
4152092025

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このページは、ブログ管理者が2011年5月23日 18:52に書いたブログ記事です。

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