他社がどんなことをやっているかは、とても気になるところでしょう。他社の施策や事例を集めることは至極当然ではありますが、そういう方のなかに活用法によってふたつのグループがあるように思います。
ひとつめのグループは、「横並び」グループ。他社ではこんなことをやっているのなら、わが社もそろそろ着手しなければかっこつかない、という思考を進め他社情報を集めて、えてしてそれらの平均的な施策、あるいはリーダー企業の施策をまねて導入を図ります。ここでの判断軸は、評価者(必ずしも上司ではない)に仕事をちゃんとしていると思われるかどうかです。評価者が何を望んでいるかは明確ではないことも多いので忖度することになります。したがって、「空気」を読むことが重要です。(乗り遅れるなという空気が多いかもしれません)
もうひとつのグループは、「概念化」グループです。多くの他社の情報を集めることは同じですが、単純に真似て導入することはしません。多くの他社事例から我社にとって有益な「概念」を抽出します。各社にはそれぞれ個別の事情があり、それに基づいて施策を決定しているはずですから、それをそのまま取り入れても自社でうまくいくはずがありません。しかし、多くの事例をみるうちに、すべてに共通する「何か」が見えてきます。(帰納法の思考ですね)その何かは、なんらかの我社に役立つ概念、あるいはルールです。それを引っ張りだすには、概念化のスキルが必須です。ものごとを抽象化する能力ともいえます。判断軸は、常に「何が今の我社に必要か」です。
こういった概念化スキルがあって、はじめて他社情報を集める意味があるのです。横並びグループで成功するのは、他社も自社も似たような文化、戦略、競争環境、社員の特性などの場合だけです。ほんの20年くらい前はそうだったのです。いい時代でした。
しかし、いうまでもなく時代は変わりました。そういった戦略などが同じだとしたら、そもそも複数の企業が併存する必然性がなくなったのです。市場から退場を迫られるか買収されるか、まじめにそんな時代なのです。
今のような不確実性が当たり前の世の中では、あらゆる情報を抽象化して捉えて、そこから意味のある概念を見つけ出し、それに対する適切な解をスピーディーの見つけ続ける、そんな思考法が多くの社員に備わっている企業が強いのだと思います。
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