人材開発における三つの流派

ビジネスの世界で永年人材開発関連の仕事に携わっていると、そこには大きく三つの流れというか流派みたいなものがあること見えてきます。私が勝手に名付けたのですが、「コンテクスト派」と「気づき派」と「ビジネス・スキル派」です。それぞれには、寄って立つ主張があります。

 

●コンテクスト派

人は、所属する組織の中で業務経験を積み、上司をはじめ周囲の人々との相互作用を通じて成長し、能力を高めていく。その組織の文化や規範、スタイルなど時間をかけてじっくり内面に取り込んでいくことで、個人の成長と組織の成果が両立する

 

●気づき派

人はどれだけ周囲から指導や教育されたところで、自分自身が本気で納得しなければ考え方は変わらないし、もちろん行動も変わらない。つまり、高い成果を出すためには行動を変えなければならないし、行動を変えるには考え方をなければならない。そして考え方を変えるには、「気づき」がなければならない。内面での深い「気づき」を得るには、通常と異なる体験や、前提の異なる第三者からの刺激が大切

 

●ビジネス・スキル派

ビジネスパーソンとして高い成果を出すには、企業によらず共通のスキルが必要。そのスキルは教育機関などで習得できる。それはビジネス理論やノウハウだけではなく、「成功者」が保有している思考パターンや行動特性、あるいは特殊なノウハウなども含む。権威やカリスマに弱い、いわゆる「自己啓発派」という分派である。「学習」実感を得やすいことが特徴。

 

それぞれに一理ありますが、限界もあります。コンテクスト派では、環境変化への対応が困難です。また気づき派は、外部から意図的に働きかけることが難しく、また自分自身どうすればいいのか迷うことが多いでしょう。隔靴掻痒の感があります。逆にビジネス・スキル派はやるべきことや学習している感は得やすいのですが、それが本当に有効なのかには、慎重な判断が必要です。それを怠ると、組織内で「頭でっかち」だとか「理屈野郎」などと阻害され、仕事で成果を上げられなくなってしまいます。

 

人材開発を外部から支援する機関も、上記三つの流派に色分けできるでしょう。また、企業内で人材開発を担当する人も、それぞれに好きなタイプがあるようです。しかし、当たり前ですがどれも重要なのです。問題は、それぞれを適材適所で使い分けられるだけの知恵を持っているかどうかです。さらには、三流派を融合させて問題解決に当たるための構想を描けるかどうかです。これからは、そこでの勝負になっていくことでしょう。

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このページは、福澤が2011年1月27日 11:37に書いたブログ記事です。

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