「管理」職でいいのか?

昨年、雑誌「企業と人材 10月号」に、中級管理職教育に関する小文を載せていただきましたが、そもそも「管理」という言葉が実態に即していないだけでなく、悪い影響を与えているのではないかと感じています。

 

管理とは、管理者が管理される人に対して、その行動を統制(コントロール)して、好ましくない行動を取らないように監督し、好ましくない行動をとった場合には罰則なりけん責を与えることを、本来は指しているのだと思います。20世紀半ばくらいまでの、工場での労務管理を想定していたのでしょう。さらには、労使対立の構造も影響している気もします。

 

もちろん、現在大多数の職場は上記の想定とは大きく異なります。本来の意味で管理をすれば、その組織の生産性は大幅に低下してしまうことでしょう。現在組織や集団の責任者(あえて管理者ではなく)に必要なのは、管理ではありません。ゴールは今も昔も、集団のアウトプットを最大化することであり、その責任を負うことです。しかし、そのための前提が変わったために、適切な手段も、それを担う責任者の役割も変わらざるを得ないのです。したがってかつては有効だった「管理」もその有効性の大部分を失ったのであれば、管理職の呼称も、それと対になった係長や課長といった役職名も不自然なのです。ちなみに、管理職をマネジャーに変えても同じことです。

 

呼称にはそれぞれ受け手が固定化したイメージが連想され、どうしても思考に制約を与えます。いろいろ理屈を並べてみたところで、管理職は管理する「エラい人」なのです。だから、呼称はとても大切だと思います。かつて、社員の意識改革のためか、社内資格とは別の対外呼称は勝手につけていいという大企業がありましたが、その後どうなったか定かではありません。

 

Jリーグは、そのことを意識したのか、チェアマンとかキャプテンとか、あまり固定的イメージのついてない役職をいろいろ考えますね。

 

では企業では、従来の中堅管理職(係長、課長など)に変わる呼称として何が適切か?リーダーも悪くはありませんが、やや「強引に(フォロワー)を引っ張る強い人」のイメージが固定化している感じがしないでもありませんし、またリーダーとは階層を超えて存在する役割だとも思うので、呼称としては不適切な気がします。非常に個人的意見ですが、現段階では(チーム・)キャプテンがもっとも適切かなと感じます。

 

 

中級管理職の呼称問題はともかく、これまでのあらゆる前提に社員だけでなく経営陣も囚われてしまうことが、組織を停滞させる大きな要因だと思います。時代は大きく変わりつつあります。なかなか気付かない前提も、徹底的に洗い出し疑うことから変革は始まるのでしょう。企業も政府も同じですね。

 

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このページは、福澤が2011年1月12日 11:39に書いたブログ記事です。

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