2000年前後、自動車業界で400万台クラブという言葉が流布しました。1社年間400万台以上生産しなければ生き残っていけないという趣旨でした。それを考慮したのかベンツがクライスラーを買収したり、大型M&Aが頻発しました。しかし、その結果はご存じのとおりで、いったいあの説は何だったのでしょうか。M&Aで儲けようという機関がしかけて、多くの企業が踊らされたようにしか見えませえ。
それから10年がたち再び似た様な議論がでています。今度は、環境投資には規模が必要だから、規模を追求するための合従連合を、という論調です。前回もそうでしたが、その意見に反論するのは難しいです。ただ、それを実行したときの弊害をどれだけ真剣に考えたのかとの、チェックは必要です。ある論調が神話化して、一人歩きを始め、誰も疑問を持たなくなり、あとは「赤信号みんなで渡れば怖くない」となっていきます。かつての日本の土地神話もそうでした。ライブドアによるニッポン放送買収騒動の頃、多くの大企業が一斉に買収防衛策を導入しましたが、これも神話に踊らされた例だと思います。冷静に考えれば、そんな経営者を守るルールのある会社の株式は、投資家からすれば投資対象から外すはずで、従って株価は下がるはずです。その後、防衛策を廃止する企業が増えていることがそれを証明しています。
話を自動車業界に戻しますが、400万台クラブ騒動の時も独自の道を歩んだホンダは、現在何を考えているのでしょうか。以下のように伊東社長はインタビューに答えています。
提携は否定しない。ただ、最も大事にしたいのは提携先で

はなく、お客様だ。それには絶対にホンダに対する誇りや忠誠心が必要だ。例えば、販売量の拡大を狙い、異なる2社が提携し販売網を相互に活用す
るとしよう。だが、販売店が愛着もない他社の商品を本気で売るだろうか。(中略)偉大なる中小企業を目指す。(中略)この厳しい時代、日本の企業もトップがもっと強い意志を示すべき時が来たと思う。
卓見だと思います。妙な神話に惑わされず、自社のあるべき姿を追求する。それがトップの責任だ。こういうトップがいる企業こそ強い企業だと思います。それに比べ、神話に踊らされ右往左往するトップがいかに多いことか。
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