スティーブ・ジョブズの伝説のスピーチ(2005年スタンフォード大学卒業式)を、観直してみました。(以下は前半です)
彼は三点を述べているのですが、その最初のポイントは「点と点をつなぐ」とうことです。前回書いた「戦略的直観」にも結びつく内容だと閃いたからです。
大学をドロップアウトすることを決意したジョブズは、「書道(カリグラフィー)」のコースに魅了され、熱心に受講しました。それが、マックの美しいフォントにつながっているのです。ずっと先になりますが、アップルを追い出され不遇をかこった時代も、振り返ってみれば人生で最も創造的な仕事が出来たと述べています。
「点と点を最初から結ぶことは難しいのです。振り返ってみてはじめて、点と点を結んだ線が見えるのです。ですから、今は無関係に見える点でもいずれは自分の人生の中で大きな線で繋がれることを信じなくてはなりません。それには、自分の勘、運命、輪廻を信じ続けなくてはならないのです。」
戦略的直観も、蓄積されてきた長期記憶が選択され、結びつくことによって起きます。脳科学者のバリー・ゴードンは2003年の著作「知的記憶」でこう書いています。
「知的記憶とは、・・・点と点をつないで絵を描くようなものである。点とは構成要素あるいは思考であり、点と点をつなぐ線は、つながりもしくは関連性である。線と線は結びつき、より大きな断片を形成し、これらの断片は結合して、あるまとまった一つの思考を形成する。このようにして形成された思考は、視覚的イメージ、知識、アイデア、もしくは問題解決となりうる。各要素、そのつながり、そしてこれらを結合させる精神過程は一体的に作用するため、一つの認知的なまとまりであるかのように見える、これこそ、人がアイデアや概念をひらめくときに起きていることなのである。」
人間の脳の中で起きている直観が生まれるプロセスと、一人の人間の人生で起きているプロセスが、相似形のように私には思えます。いずれも意図的に点を選び、つなぐわけではありません。操作可能ではないのです。ジョブズが、若い頃から禅に傾倒していることもわかる気がします。
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