求心力と言葉の力

組織には求心力が必要です。では、何が求心力になるでしょうか?ひとつは、「リーダーの徳」でしょう。古来の中国や日本のリーダーには、徳が最重視されました。劉備しかり、西郷隆盛しかりですね。しかし、何事も属人化してしまうと、永続性がありません。

 

そこで、教科書的に言えば「理念」や「ビジョン」となります。でも、理念やビジョンで結びついた組織って、どのくらいあるいでしょうか?特に大企業で。思い当たる企業名をあげられますか?J&Jのクレドなど有名です。行動規範や意思決定の基準としては、機能していると思いますが、それが求心力となっているかは、また別でしょう。

 

個人的には、理念やビジョンのような崇高なものには、なかなか多くの人々を動かす力は生まれないのではと感じています。宗教なら別ですが、ビジネスにはありがたすぎて、エネルギーにならないのです。

 

では何があるか。社員がつい口に出してしまうような、キャッチフレーズではないでしょうか。それは、理性より感性に訴えかけるものです。

 

思いつくものを挙げれば、以下のようなパターンがありそうです。

・仮想敵を作る:「打倒キャタピラー」(コマツ)、「シェアNo.1奪回」(キリン)

・同業他社との質的違いを宣言:「ファッションの伊勢丹」、「わけあって、安い」(良品計画)

・独自の生き方を訴える:「海軍に入るより、海賊であれ」(アップル)

 

 

結果的に、上記のようなフレーズは社員を奮い立たせ、そんな雰囲気(文化)に魅かれて顧客が付いてくるのかもしれません。ただ、重要なのは、それらが気に入らない(潜在的)社員や顧客もいるということです。八方美人のためのフレーズではないのです。

 

日本人は、このようなベタなスローガンが大好きです。かっこいい理念や精緻な経営戦略よりはるかに求心力や羅針盤となり、エネルギーを生み出すと思います。

 

 

恩師でもある嶋口充輝慶応義塾大学名誉教授は、それらを「アンビション」と定義しています。まさに、大志です。また。ミンツバーグは、戦略創造の観点から、「アンブレラ戦略」と言っています。わかりやすいスローガンの傘のもとに、現場から新しい戦略が生み出されてくるのです。

 

こういう、あいまいですが、人の感情に訴えかける言葉の力を、再認識すべき時に来ているように思います。

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このページは、福澤が2010年9月 7日 19:45に書いたブログ記事です。

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