今の仕事と将来のための仕事

先日、スマートHRD講座の受講者の同窓会(飲み会)がありました。皆さん、企業の人材開発担当者なので、自ずと仕事の話になります。異口同音におっしゃるのが、「忙しくて、本当やりたいことがなかなかできない」ということです。

 

課員は減少しているにも関わらず、コンプラや労務問題、メンタル問題など昔に比べて仕事量は増えています。社員の多様化(バックグランドも意識も)が進み、かつてのようにひとくくりでは対応できないのです。そうすると、目先の火消しに追われ、それで時間がどんどん過ぎていく。

 

ある方が嘆いていました。

「人事の醍醐味は、社員のために仕事をした結果、社員が成長しやる気を出して成果を出し、会社も良くなっていく、そこにあるはずなんだ。でも、今はそんな長期的なことを考えている余裕がない。思い切って戦略的な研修を起案したら、上司からそのROI(投資収益率)はどのくらいだと問われた。そんなこと分かるはずないのに。わからないとできないのなら、何にもできない。」

 

どこの会社も似たような状態なのではないでしょうか。多くの日本企業では、給与関連(ペイロール)や労務・メンタル対策、新人研修や採用(本来は長期ですが実態は短期)といった超短期の業務と長期的視野に立つべき戦略的人材開発業務を、同じセクションで担当しています。マンパワーの少ない現状では、目先の火消しに追われるのもやむをえないでしょう。

 

こうなると、組織構造や戦略をどう考えるかという、もう一段階も二段階も上の問題になります。「我社の資産は人」という言葉は、神棚の上に祀られているようです。

 

経営トップも、長期的視野に立つCEOと、現状の執行に責任を持つCOOに分離する会社も増えてきました。最重要資産である、「ヒト」についても、長期的視野に立つ役割と、短期的対応を担う役割に分離すべきだと思います。どちらもヒトに関わるので人事部で、という発想では、将来に禍根を残すことになってしまうかもしれません。

 

こんなことを考えながら、大いに盛り上がった夜でした。

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このページは、福澤が2010年9月10日 10:44に書いたブログ記事です。

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