強いミドル:人材開発担当者の例から

日本企業の強さはミドルにあると言われていました。ミドルとは、単に上の意向を下したり、下の意見を上に上げるだけの、中間通過点ではありません。そこには、必ず意志を持った解釈が介在します。人間は機械ではないので、個人のスクリーニングを通った時点で、その人の意図が必ず入るのです。これも、意図的に行う場合と、そうでない場合がありますが。

 

経営陣も、ミドルからの情報に頼らざるを得ない以上、ミドルの意図が経営に間接的にしろ、反映されるのです。

 

では、過去の日本企業は、なぜミドルが強かったのでしょうか。欧米企業に比べて、短期的成果にこだわらず、長期的視野で行動できたからだと思います。それには、終身雇用の存在が大きいでしょう。また、経営陣もそういうミドルを自由に泳がせる余裕というか度量があったのでしょう。これも企業の株主構成が、現在よりも固定的だったことが大きいと思います。

 

 

これまで数百人の人材開発担当のミドルの方と接点を持たせていただきましが、彼らを大きく3種類に分類できます。①自分が会社を変えていく(良くしていく)という気概を持って、多少のリスク覚悟で取り組む方、②気持はあるのだが、リスクまでは取れないと考える方、③与えられた業務を適切に処理する方、です。

 

①のタイプが人材開発部門に多い会社ほど、長期的に業績が良い傾向がありました。また、その後一緒にお仕事させていただく機会も多くなります。かつての同僚がファンドマネジャーに転職した後、今どこの会社の研修をしているかと、尋ねてきたほどです。

 

①のミドルが人材開発にいるから、その働きによって業績が良くなるというよりも、①のタイプのミドルを人材開発部門に配属するような企業だから業績が良くなる、という因果関係ではないかと、私は見ています。それだけ、「人」を重視しているからです。

 

 

ミドルの力は大切ですが、そういう人材を生み出し、良い仕事をさせる「場」を創ることができる会社の「力」こそが、競争力の源泉だったと思います。

 

終身雇用は実質なくなり、浮動株主におびえる現在の日本企業において、どうすれば再び強いミドルを生み出すことができるのでしょうか?

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このページは、福澤が2010年9月 2日 13:15に書いたブログ記事です。

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