一昨晩、「スマートHRD養成講座(第二期)」(日本CHO協会主催)の第三回目のセッションを行いました。前期に引き続いて第三回目は、ゲストスピーカーの講演を題材にしたダイアログです。
今回のゲストは、今年「能力開発優秀企業賞」と「働きがいのある企業」をダブル受賞した日本ベーリンガーインゲルハイム㈱(以下日本BI)のタレントマネジメント部統括部長の大野宏さんでした。当社は、戦略と組織・個人の一貫性のために、様々な先進的な取組みをしておられます。まさに、新しいHRDすなわちスマートHDRのモデルだと思い、ゲストスピーカーをお願いした次第です。非常に刺激的なお話でしたが、その中の2点について書きたいと思います。
私は、スマートHRDには4つの役割があると整理しています。「企業文化の番人」「能力開発の専門家」「ネットワーク・リーダー」「問題解決のパートナー」の4つです。日本BIには、ビジネスパートナー部(BP)という組織が人事本部の中にあり、そこのスタッフがラインに入り込んで、「人・組織・組織風土」の観点から、ラインの戦略目標達成の支援を行っています。まさに、BPは「問題解決のパートナー」なのです。昨日も、受講者の方々からBPに関する質問が多数出てきました。ラインの人事担当ではないのがポイントです。
かつて松下電産は、経理社員が独立性の高い事業部に駐在して、経営管理のための神経の役割を果たしていたそうです。「カネ」で束ねるわけですね。一方、日本BIでは、戦略目標達成に向けて、BPが中心となり「ヒト」で束ねているという言い方もできそうです。
もう一つ興味深かったのは、「関係の質」にこだわっていることです。組織業績を向上させるには、組織風土が重要。組織風土を良くするには、信頼と誇りと連帯感が欠かせない。では、どうやってそれらを獲得するのか。ビジネスですから、成果が上がっていれば、一般に組織風土も良くなります。ならば、行動の質を上げて、結果の質を高めればいいのだと考えがちです。だから、営業にプレッシャーをかけ、顧客訪問数を上げよう!!というアプローチですね。
これは、目に見える「行動の質→結果の質」の関係に着目しているにすぎません。しかし、日本BIでは、「行動の質→結果の質→関係の質→思考の質→(行動の質)」のサイクルで捉えています。つまり、見えにくい「関係の質→思考の質」に着目し、そこに働きかけようとしているのです。このサイクルがうまく回れば、「人と人が多様性の中で、健全でポジティブな関係性を構築することで成果を出し続ける」ことができます。「見えない関係性を見える関係性にし、組織のシステムを開発する」ことにチャレンジしているのです。
当たり前ですが、現場で実際に手がけている方のお話は、非常に説得力があります。HRDには、まだまだ大きなフロンティアがあると、あらためて身震いする思いでした。
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