汎用システム導入による学習機会の減少

先日、ある会社の経理畑の管理職の方から、最近の経理部門スタッフの足腰が弱くなったとのお話を伺いました。経理業務に関して、知識と考える力が弱くなってきているそうなのです。

 

理由を伺ったところ、約10年前に導入したERPに原因があるということでした。そのころ多くの大企業で、コンピュータの分散化(クライアント・サーバー・システム)に伴い、会計システムをつくり替えなければならなくなったのです。

 

ついては、コスト面からもスピード面からも、従来の自社開発の専用ソフトから汎用パッケージへ切り替え、多くの場合は当時急成長していたERPの導入を決めました。社内独特の会計管理を、グローバル・スタンダードに合わせようという狙いもあったことでしょう。その会社も、大急ぎで導入したそうです。

 

それまでは、10年ごとくらいに会計システムの大幅な変更、つまり作り直しをしてきたそうです。それは大変な作業で、経理担当者の負担も半端ではなかった。しかし、そのプロセスの中で、若い経理マンが徹底的に鍛えられえたのです。そもそも会計プロセスから科目定義まで、あらゆることを再検討するのですから。その方も、そこで相当鍛えられたとおっしゃっていました。

 

現在は、基本的には標準パッケージを使用しているので、経理マンが会計システム見直しに深く関わる機会も多くありません。使うことはできても、自分が作ることに関わっていないのですから、ブラックボックスです。その結果、経理マンの足腰が弱ってきているのです。

 

何事もプロコンがあります。ERPの導入によって多くのメリットもあることでしょう。(現場からは、そうじゃないとの声もあがっているようですが・・)一方、組織の学習能力の観点からは、デメリットもあるのです。

 

これが、この先どういう影響を企業に及ぼすかは、まだわかりません。ただ、なんらかの手を打つ必要はあるかもしれません。

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このページは、福澤が2010年7月 1日 11:57に書いたブログ記事です。

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