ワールドカップに入ってから、試合ごとに結束を高めていることが、試合内容から明確にわかりますね。前回ドイツ大会と大違いです。日本チームらしさというか、日本人の特性に合ったチームになってきているようです。キーワードで言えば、忍耐、組織、補完、きめ細かさといった感じでしょうか。三点目、ゴール前での本田から岡崎へのパスは泣かせました。
本田の試合後インタビューで、「思ったほど嬉しくない」という言葉が印象的でした。そこに彼の非凡さを感じます。4月の欧州チャンピオンズリーグ(CL)の順々決勝でインテル・ミラノに敗れた直後のインタビューでも、似たような発言をしています。CLの経験で得たものは何?との質問に、
「これからの取り組み次第ですね」と応えています。それに次いで、
「CLで1点取ったからといって、僕の中では何かが劇的に変わったということはない。僕にとっては、練習試合の1点と同じ」
「ポイントは昨日の悔しさ。これから僕のモチベーションになる。それが成長につながったとき、『あの経験が生きました』と言える」
「目標が明確になった。僕は毎日、こうなりたいというイメージを頭の中に描いている。でも、強い相手と1試合すると、そうやってイメージする以上に明確に、なりたい自分が見えてくる。『こうなりたい』が、『こうでなければならない』に変わる。昨日の試合がそれだった」(朝日新聞10/5/8朝刊)
人が成長するための内的動機づけの一側面として、達成欲求と学習欲求があります。達成欲求とは、文字通り目標を達成したいという強い気持ちです。ワールドカップで決勝トーナメントに進出したいという欲求ですね。学習欲求は、自分自身が成長したいという欲求です。前回のプレーより精度を上げたいとか、メッシみたいなドリブルがしたいとかです。達成の判断は、客観的にできるものがほとんどですが、思うような学習ができたかどうかの判断は、自分自身しかできません。つまり、自分自身に厳しく、かつ自分を客観視できなければなりません。
オリンピックで入賞した日本人選手が、直後に「今日の自分をほめてあげたい」とコメントをすることが近年多かったですが、彼ら彼女らには学習欲求より、達成欲求のほうが強いのでしょう。参加してそこそこ頑張るという目標は達せうした。
そこがアマチュアとプロの分岐点なのかもしれません。本田選手は、正真正銘のプロですね。だから、今日の勝利直後にはもう、次の学習目標に頭が切り替わっていたのでしょう。思ったほど喜べないのは、仕方ありません。
決勝トーナメントでの、日本チームのさらなる成長に期待しましょう。
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