組織能力を開発する

| | コメント(0) | トラックバック(0)

組織開発を部署名に付けた日本企業は多くはないと思います。一方、外資系企業では珍しくありません。その差は何なんでしょうか?

 

日本企業では、組織とは開発するものではなく、構成員をアサインし役割を規定すれば出来上がるものでした。したがって、開発すべきは組織ではなく人材でした。組織能力についても、あまり意識してこなかったと思います。意識しなくても、創業社長の個性や哲学が、何となく組織に浸透して、それが組織能力となっていたのです。

 

最近、私がそれを痛感したのは、日本電産です。当社は、リーマンショック直後の20091月、社員5%、幹部10%の賃金カットを発表しましたが、見事20103月期には好決算を記録し、賃金カット分に1%の金利を上乗せして全部返済しています。一般の会社では、これだけ迅速かつ徹底できないでしょう。日本電産の組織能力は、その「結果責任」の徹底にあるのではと思います。

 

組織能力は、ある程度長い時間をかけないと形成できないでしょう。それは、戦略との一貫性が必要です。これまで多くの日本企業は、大きな戦略転換を必要としてこなかったため、組織能力をあまり意識する必要がなかったと考えられます。したがって、じっくり形成することができた。

 

しかし状況は変わりつつあります。社員の多様性も高まり、またM&Aを含む戦略の大胆な転換にも迫られています。それに合わせるようにして、組織能力の開発あるいは転換も必要になっています。

 

ところで、個人の能力開発(人材開発)と組織の能力開発を峻別する必要はあまりないのではと思います。人材開発を検討する際にも、その組織に対する効果を十分吟味する必要があります。また、組織開発を検討する際にも、それが個人の能力発揮にどのような影響を及ぼすかを想定すべきでしょう。つまり、コインの裏表の関係なのです。

 

戦略を実現するために、個人や組織にどのような働きかけをすべきなのかを、長期的企業経営の観点から検討するのです。日本企業においても、このような企画と実施を人材開発部門が担うことになっていくと思います。今日、人材開発部門ほど、戦略的に重要な部門はないのだと考えるべきでしょう。

トラックバック(0)

このブログ記事を参照しているブログ一覧: 組織能力を開発する

このブログ記事に対するトラックバックURL: http://www.adat-inc.com/cgi-bin/mt-tb.cgi/319

コメントする

このブログ記事について

このページは、ブログ管理者が2010年6月 7日 10:26に書いたブログ記事です。

ひとつ前のブログ記事は「ミクロからマクロが見える:「クアトロ・ラガッツィ ~天正少年使節と世界帝国」を読んで」です。

次のブログ記事は「「高峰秀子の流儀」を読んだ!」です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。

ウェブページ

Powered by Movable Type 4.1