「高峰秀子の流儀」を読んだ!

高峰秀子の流儀
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小津安二郎監督にとって原節子がなくてはならないように、成瀬巳喜男監督にとって高峰秀子は最高のパートナーでした。原は若くして引退し、鎌倉の自宅に引きこもってしまい、一切外部との関係を遮断しています。高峰は、55歳で引退したあとも、エッセーを書き続けました。でも、やはり映像には現れません。

 

私は成瀬映画ファンで、当然のように女優としての高峰秀子のファンです。しかし、なぜか彼女のエッセーは読んだことがありません。今回、斎藤明美著「高峰秀子の流儀」(新潮社)を読んで、大いに後悔しています。

 

梅原龍三郎に気に入られ、多くの肖像画を残している、往年の大女優のイメージを越えてはいませんでした。(失礼ながら、存命とは思いませんでした)その作品(映画とエッセー)と人柄を、私が尊敬する司馬遼太郎、沢木耕太郎、井上ひさし各氏が絶賛していることを、本書で知りました。

 

驚くべきことに、彼女は学校に一ヶ月強しか通っていないそうです。小学校含めてですよ!字は、絵本などを見ながら独学で修得したのです。4歳で実母が亡くなると、叔母に養女としてもらわれました。その直後に子役デビューです。養母(高峰はデブと呼びました)は、金づるとしての高峰にしか興味がなく、学校に通わせなかったのです。しかし、彼女は養母が死ぬまで養い、世話を続けた。

 

司馬遼太郎が、高峰を称してこう言ったそうです。

 

「いったいどういう教育を受ければ、こんな人間が出来上がるのだろう」

 

教育は学校で受けるものではないのです。先日亡くなった市川昆監督が、終生頭が上がらなかったのが高峰です。市川の撮った東京オリンピックの記録映画が、完成直後政治家やマスコミから批判され、ぼこぼこになっていた市川を、彼女一人が擁護した話は、全くもって痛快。こんな女優、いや人間がいたことが驚きです。(つい先日、日経「私の履歴書」で暴露した有馬稲子とは大違い!!)

 

 

大女優高峰秀子は、86歳でまだ健在です。この伝説のような人と同じ空気を吸っていると思うだけで感謝したくなる、そんな人柄が伝わってくる一冊です。これから、エッセーを読みます!

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このページは、福澤が2010年6月 8日 16:57に書いたブログ記事です。

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