伝統ある一部上場アパレルメーカーのレナウンが、中国企業の傘下に入ることになりました。もはや、日本企業が中国企業に買われることは珍しいことではありません。「変われない企業が買われる」のは、資本主義の必然です。
レナウンの北畑社長が会見で、「変わりきれなかった・・。」と発言したのが、印象的でした。細かい情報は知りませんが、業績が長期低迷する中で、たぶん様々な取組みをしようとしたのでしょう。製造小売(SPA)がアパレルの主流になるなかで、時代から取り残されている感は否めませんでした。
では、なぜ変革できなかたのでしょうか。様々な理由はあるでしょうが、やはりトップが決断できなかったからだと思います。
変革によって失うもの、例えば過去のブランドイメージや仕事の手順や減っているとはいえ現在の「売上」などの大きさと、変革することによって得られるかもしれない将来の大きなリターンとの、トレードオフの中で、大きな意思決定ができなかったのでしょう。なぜできなかったのか。
たとえば、50億円を確実に失うことと将来100億円を得られるかもしれないことの比較を、合理性に基づいて行うことは案外難しいものです。将来の100億円の価値を、リスクファクターを考慮した上で現在価値に割り引いて、合理的に評価はできなくはありません。それが、仮に60億円だったとします。合理的に考えれば、50億円を失っても変革すべきです。でも、感情をもつ人間の意思決定はそうはなりません。確実に失う50億円のほうが、合理的に計算された60億円より価値が大きくなる傾向にあります。それが感情です。(プロスペクト理論)
レナウンも感情(変革はできればしたくない)と合理性との間で大きく揺れたことでしょう。そして、感情が勝ち小さな改善を繰り返すことで延命を図ったに違いありません。人間は案外楽観的です。時間が経てば、状況は好転するかもしれないと思いたいし、思うのです。
でも、やっぱりだめだった。それが、北畑社長の「変わりきれなかった・・・・。」の発言に表れていたのではないでしょうか。
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